子宮筋腫
●成人女性の4~5人にひとりが、子宮筋腫です
子宮筋腫は、子宮に良性のこぶ状のかたまりができる病気で、成人女性の4~5人にひとりがなるといわれるほど身近な病気です。
なぜ筋腫ができるのかは、まだはっきりとわかってはいませんが、女性ホルモンの卵胞ホルモンが筋腫を大きくすることに関係していると考えられています。ですから、ホルモンの分泌がさかんな30才以上の成熟期に多くみられます。
●不妊や流産の原因になることも…
子宮筋腫は良性のこぶなので、すぐに治療をしないと命にかかわるというものではありません。ただ、異常に経血量が多いとか、貧血に悩まされるようなときは、婦人科で相談しましょう。
また、なかなか妊娠しないと思っていたら、筋腫があったため、という場合も。とくに、粘膜下筋腫があると、子宮内膜がデコボコして、受精卵が着床しにくい原因となります。流産や早産の原因になることもあるので、妊娠を望む人は、早めに治療を受けることをおすすめします。
●代表的な症状は、経血量の増加
子宮筋腫の代表的な症状は、経血量の増加です。個人差もありますが、子宮内膜症などとは違い、生理痛はそれほど強くはならないようです。
また、筋腫のできた場所によって、症状の出方も異なります。比較的症状が出にくいのは、子宮の壁の筋層内にできる「筋層内筋腫」や、子宮の外側に突き出るようにできる「漿膜[しょうまく]下筋腫」です。ただし、漿膜下筋腫は、子宮からのびた茎のような部分がねじれて激痛をおこすことがあります。
経血量が多く、過多月経、貧血などの症状が出やすいのは、子宮の粘膜下にできた筋腫が子宮内腔[ないくう]に向かってこぶ状に突き出た「粘膜下筋腫」です。
ほかに、筋腫がまわりの器官を圧迫するため、便秘や頻尿になったり、逆に尿が出にくくなったりする場合があります。そのほか、お腹の張り、下腹痛、腰痛などの症状が出ることもあります。
子宮筋腫の種類
●1:最もポピュラーな「筋層内筋腫」
子宮筋の中にでき、筋腫全体の70%を占める最もポピュラーな筋腫です。大きさはいろいろで、こぶし大のものが1個のこともあれば、大豆大~鶏卵大のものが複数個できることもあります。小さければほとんど症状もなく痛みもないのですが、大きくなると、過多月経を招きます。
●2:こぶのように外に突き出る「漿膜下筋腫」
子宮表面をおおう漿膜の下にでき、子宮の外側にこぶのように飛び出す筋腫です。なかには、きのこのような茎を持つ「有茎漿膜下筋腫」ができることもあります。1~2個だったり、鈴なりだったり、ごつごつの塊だったりしますが、症状が出ないので、かなり大きくなるまで気づかないことが多い筋腫です。
●3:内側に向かって育つ「粘膜下筋腫」
子宮の内壁をおおう粘膜(内膜)のすぐ下にでき、子宮内腔に向かって発育する筋腫です。
この筋腫にも、茎がついた有茎粘膜下筋腫があり、さくらんぼのように筋腫が茎にぶら下がっています。この茎がさらに長く伸び、筋腫が子宮口から膣内に飛び出しているものを「筋腫分娩」といいます。筋腫を異物と判断した子宮が収縮して、胎児を分娩するように子宮の外に排出してしまうのです。生理(月経)時に出血が止まらず、貧血となってしまうケースが多く見られます。
●4:いろいろな種類の筋腫ができる「多発性筋腫」
1つの子宮の中にいろいろな種類の筋腫が多数できるのを、特に「多発性筋腫」といいます。3種類の筋腫がまざって、10~20個もできることもあります。しかしながら筋腫はもともと良性のものなので、命を脅かすことはありません。
治療法は筋腫の大きさや位置で異なり、様子をみる場合も
治療法は、筋腫の大きさや位置、症状、本人の年齢や希望などを聞き、相談して決めていきます。良性のこぶですから、症状が出ていないのであれば、治療をせずに経過を見ていくこともあります。
症状が強い場合には、ホルモン剤で生理を止め、閉経状態にすることで筋腫の成長を止めることがあります。ただし、更年期障害のような症状や、骨が弱くなるなどの副作用が出るので、若い人には行わず、閉経に近い年齢の人に一時的に行うケースがほとんどです。
筋腫が大きく、症状がつらい場合は手術をする場合も。ただ、若い人や今後妊娠を望む人には、筋腫の部分のみ取り除き、子宮を温存する方法もあります(子宮筋腫核出術)。子宮腺筋症と合併していたり、たくさんできているような場合で、今後妊娠の予定がないという人には、子宮ごと取る手術を行うこともあります。
また、最近は、お腹を切らずに内視鏡で摘出する方法も行われるようになりました。ほかにも、子宮に行く動脈に薬を入れて固めることで、筋腫の成長を止める子宮動脈塞栓[そくせん]術という手術法や、超音波を用いた集束[しゅうそく]超音波治療という方法も試みられています。