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もしかしたら私、不妊症かも…?

もしかしたら私、不妊症かも…? もしかしたら私、不妊症かも…?

避妊をしていないのに、2年間妊娠しない場合を不妊症といいます。現在、日本では10組に1組の夫婦が不妊に悩んでいるそうです。ここでは、不妊症の検査とおもな治療法を紹介しましょう。

●2年たっても妊娠しなかったら、不妊症を疑って早めに対策を

不妊症とは、医学的には避妊をせずに性生活を続けて2年たっても妊娠しない場合をいいます。不妊症の検査や治療には時間がかかりますので、妊娠を望んでいるのになかなか子どもができないときは、早めに専門医に相談しましょう。避妊をやめて1年過ぎても妊娠のきざしがみられなければ、受診したほうがいいでしょう。婦人科でも、不妊症外来を設けているところや、不妊専門のクリニックを利用することをおすすめします。診断をスムーズに行うために、基礎体温表や人間ドック・他院のデータを持参するのを忘れないようにしましょう。

●さまざまな検査と原因

不妊症の検査では、血液や尿検査によるホルモン測定や子宮頸管粘液検査(ヒューナーテスト)、超音波検査や子宮卵管造影、子宮内膜の検査などを行います。男性は、精液検査などを受けます。検査結果にもとづいて原因を探り、治療方針を立てていきます。

不妊症には、さまざまな原因が考えられます

●不妊の原因の約4割が、男性側にあります

不妊症は女性に原因があるように思われがちですが、実際には、男性の原因が4割程度と見られています。不妊かも、と思ったときは、夫婦そろって原因を探ることが重要なのです。検査でわかる主な原因には、以下のようなものがあります。

不妊の原因の約4割が、男性側にあります

①精管通過障害

精子はつくられているのに、精子の輸送経路である副睾丸、精管、前立腺、精嚢のどこかに異常があって、精子の通過が妨げられている状態です。

  • 精巣上体炎
  • 閉塞性無精子症
  • 逆行性射精など

②造精機能障害

男性側の不妊原因としてもっとも多いのが造精機能障害、つまり精子をつくる能力が低下している場合です。精子がない、精子の数が少ない、運動率が悪い、奇形の精子が多いなどが代表的な例で、性欲や性交機能は正常なので、検査を受けるまで異常に気づかないのが普通です。

  • 無精子症
  • 乏精子症(精子の数が少ない)
  • 精索静脈瘤
  • 感染症
  • 精子無力症(精子の運動率が悪い)
  • 染色体異常
  • 逆行性射精
  • 悪性腫瘍など

③性行為障害

勃起[ぼっき]しない、勃起できないこと。性器の形の異常や、糖尿病などの全身的な病気、交通事故や手術の後遺症による機能障害、精神的な理由などがあります。適切な治療を受ければ機能が回復する場合もあり、カウンセラーなどに相談しながら、治療する人もいます。

  • ED(勃起障害)
  • 早漏[そうろう]、遅漏[ちろう]
  • 膣内射精不能
  • 逆行性射精

●男性不妊の検査

*問診

現在までにかかった病気や治療歴を聞き、その中から原因を探ります。

*精液検査

精子の数や運動性に異常があれば、男性不妊ということになりますので、調べておかなければなりません。精子の数は性交後に減少し、回復に4~5日はかかるので数日間禁欲したうえで調べます。

*視・触診

精巣や精巣上体、陰茎に異常がないかを、目視や触診で確かめます。

*内分泌検査

採血し、精巣を刺激する脳下垂体からのホルモンや、精巣から分泌されるホルモンなどを検査します。

*染色体検査

精液検査の結果、精子の形成に問題があった場合に必要となる検査です。

*内分泌検査

抗精子抗体、クラミジア、淋菌などの感染症、メタボリックシンドロームも男性不妊の原因になるため、チェックします。

●女性側の原因は、大きく分けて4つあります

女性側の原因は、大きく分けて4つあります

①卵管因子

卵管は、排卵された卵子をとり込んだり、受精卵を子宮に送り込んだりする大切な器官です。ここが癒着してとじていたり、せまくて通りが悪かったりすれば、精子が卵子と出会えない、受精卵が移動できないなどの弊害が出ます。

  • 卵管癒着
  • 卵管の炎症
  • 卵管水腫
  • 卵管采の先天異常など

②排卵因子

卵胞がまったく育たなかったり、ある程度まで育った卵胞が成熟しなかったり、また、せっかく排卵直前の大きさまで育っても破裂しなかったりと、排卵すること自体がむずかしい状態だと、妊娠しにくくなります。

  • 無月経
  • 稀発月経
  • 無排卵症
  • 高プロラクチン血症
  • 多のう胞性卵巣症候群
  • 黄体機能不全
  • 性腺刺激ホルモン分泌障害など

③頸管因子(精子進入障害)

頸管粘液は、精子が子宮を通過しやすいようにするためだけでなく、さかのぼっていく精子の運動性を高める働きがあります。この頸管粘液の量が少なかったり、にごっていたり、粘りがあり過ぎる場合は、精子が子宮の中まで進入できないことがあります。

  • 卵胞ホルモンの分泌障害
  • 子宮頸管炎
  • 抗精子抗体
    (男性の精子と結びついて運動性や受精能力を低下させる抗体)があるなど

④子宮因子(着床障害)

精子と卵子が受精しても、子宮内膜に無事着床できなければ、妊娠は成立しません。子宮になんらかの異常があると、着床が阻害されやすくなります。

  • 子宮筋腫、子宮内膜症、子宮腺筋症
  • 子宮内膜ポリープ
  • 子宮内膜炎
  • 子宮奇形
  • 黄体機能不全
  • 子宮体がんなど

●女性の不妊症の検査は、生理周期(月経周期)にともなって行われます。

*月経結核菌培養(生理(月経)周期の1~2日目)グラフ[A]

内性器に結核があると不妊の原因になることがあります。生理の1日目から2日目に経血をとって、結核菌の培養検査をします。

*子宮卵管造影検査 (生理初日から9~10日目頃)グラフ[B]

子宮の位置や大きさの異常、奇形など、卵管の太さ・通過性などを調べるために子宮の中に造影剤を入れてレントゲンをとります。生理周期の9日目か10日目頃、低温の時期に行います。

*頸管粘膜検査(生理初日から12~14日目頃)グラフ[C]

排卵の直前に頸管の粘液は透明化して精子を通しやすくなりますが、このような変化があれば排卵を確認することができます。周期の14日前後の低温期の最後に行います。

*ヒューナーテスト(生理初日から12~14日目または排卵前)グラフ[D]

頸管粘膜をとって実際にその中を精子が通るか否かを検査します。そのため、いつ性行為があったのかを正確に記録する必要があります。精子が何時間生きているかが問題になるので、性交から診療までの時間を記録します。

*子宮内膜検査・黄体ホルモン検査(高温期の3~5日)グラフ[E]

子宮内膜がホルモンに反応しているかどうか、炎症があるかどうかなどを調べるために、基礎体温が高温相になってから3日目頃に黄体ホルモンの測定(血液検査)と一緒に行います。

生理周期で見る不妊症の検査 生理周期で見る不妊症の検査

●そのほかにすること

*基礎体温測定

生理周期や排卵の有無、ホルモンの動態を知るために最初に必要なもの。この体温表をもとにして検査や治療を行います。

*その他一般検査

内診・膣分泌物生検・膣分泌物培養・感染症検査(クラミジア、梅毒、HIV、B・C型肝炎、HPV)・子宮がん検査など。

不妊治療の方法は、大きくわけて2つあります

不妊治療の方法は、大きくわけて2つあります

不妊治療には大きくわけて、一般不妊治療と高度生殖医療の2つがあります。不妊治療は基本的に保険がききませんし、高度生殖医療の治療はかなりの高額となります。ですから不妊治療は、経済的なことや年齢的なことなど、夫婦でよく相談しながら進めることが大切です。また、不妊治療の成功には、医師とのコミュニケーションも欠かせません。正直に悩みをうちあけ相談し、夫婦と医師が一体となって治療を進めていくことが大切ですね。おもな治療法にはつぎのようなものがあります。

●一般不妊治療

1:タイミング療法

排卵日を特定し、その日にセックスをすることによって自然妊娠をめざす方法です。排卵日は、超音波検査(エコー)による卵胞の大きさの確認と頸管粘液検査や血液検査、尿検査によるホルモン値測定などにより予測します。生理不順(月経不順)、軽度の排卵障害、黄体機能不全がある場合には、排卵誘発剤を用いてさらにタイミングを合わせることもあります。

2:人工授精(AIH)

精液を子宮腔内に注射器で直接注入する方法です。男性側の精子や精液の異常、女性側の頸管粘液分泌不全、機能性不妊などに効果があります。採取した精子を直接子宮に注入する場合、妊娠率を上げるため、精液を洗浄・濃縮して、良好な精子や運動性のよい精子を選別して注入します。

一般不妊治療

●高度生殖医療

1:体外受精・胚移植

容器のなかで卵子を男性側の精子と受精させ、子宮内膜に受精卵をもどす方法です。自然排卵で1個の卵子を採取する場合と、排卵誘発剤を使い、卵巣内に複数の卵子を成熟させ、膣から針を刺すことでそれらを採取する場合があります。また自然排卵周期に実施することもあります。受精卵が4~8細胞に分割した段階で、注入器を使い子宮腔内にもどします。卵管がどちらも閉塞している卵管障害、卵管癒着、子宮内膜症、女性側に抗精子抗体がある場合、原因不明の機能性不妊の場合などに行われます。

高度生殖医療

●不妊治療も進化しています

◎受精卵は、凍結して保存できます。

体外受精で子宮内に移植されなかった残りの受精卵(胚)(→「妊娠・出産」の項で紹介)は、妊娠が成立しなかった場合、次の機会にそなえて凍結保存できます。これは液体窒素内で半永久的に受精卵を保存することが可能になったためです。女性側にかかる卵巣刺激や採卵などの負担を軽くし、良好胚をムダにしないなど、多くのメリットがあります。

◎体外受精よりも自然な、「配偶子卵管内移植」(GIFT)。

採卵したうち、良好な成熟卵子を精子といっしょに卵管内へ移植する方法です。本来の受精の場所である卵管膨大部で精子と卵子が出会えるため、体外受精より自然に近い受精が可能となり、妊娠率としては体外受精よりも高いという報告もあります。移植には、腹腔鏡を使い、卵管膨大部にチューブを入れて行います。卵管が正常な軽い子宮内膜症や機能性不妊に効果的ですが、入院・麻酔が必要なため施設は限られるのが難点です。

2:顕微授精(ICSI[イクシー])

顕微授精(ICSI[イクシー])

顕微鏡を使い、1個の精子を直接卵子に注入する方法。スポイトのような細いピペットという器具で、精子を卵子の細胞質まで押し入れるイクシー法という方法がポピュラーです。重度の男性不妊に効果的で、卵子1個に対して、1個の運動率が良い精子があれば妊娠可能となります。男性側の精子に問題があったり、女性に抗精子抗体があったりする場合に行われます。

●検査をしても原因がわからない不妊もあります

男女ともにいろいろな検査をしたのに、どこにも悪いところがない、しかし妊娠しないという場合を機能性不妊と呼びます。機能性不妊と診断された場合でも、妊娠率を高めるために、排卵日を予測するタイミング療法から始め、一般の不妊治療と同じような段階を踏んで治療が行われます。

【記事監修医】

西山紘子先生
社会福祉法人 恩賜財団済生会支部東京都済生会
東京都済生会中央病院/産婦人科医

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