悩みを解決するヒントを見つけよう。痛いのはどうして?
「生理痛」とひとくくりにいわれますが、腹痛だけでなく、腰痛や頭痛など痛む場所や感じ方は人によって少しずつ違いますよね。そこで、みんながどんな痛みで悩んでいるかを集計してみました。
※ユニ・チャーム調べ 2017年8月 女性の体に関するアンケート 回答者数:4,949人
●痛みが出た時の対応
●程度によって我慢したり痛み止めを服用したりしています。どうしても酷いときには横にならないといけないこともあります。
●冷やさないように腹巻などをしたり、カイロを当てたりしています。
●じっと痛みが去るのを待っています。
なぜ痛くなるの? そのメカニズムとは?
●これといった病気がなければ「機能性月経困難症」
これといって病気がないのに、寝込んでしまうほど痛みがつらい状態を「機能性月経困難症」[きのうせいげっけいこんなんしょう]といいます。原因は、経血を押し出すときの子宮の収縮、ホルモンバランスのくずれによる骨盤内のうっ血、全身の血行の悪化、ストレスなど。
おもな症状は、生理(月経)が始まって2~3日目の量が増えるころのギューッと押されるような腹痛、肩こり、むくみ、吐き気、イライラ、のぼせ、眠気などに悩まされる場合も。また、骨盤内のうっ血によって下半身の血流が悪くなり腰痛を招いたり、自律神経の乱れから頭痛がおこるなど、腹痛以外の痛みもおきることがあります。
●生理痛の症状や程度は毎回変化します
排卵は、通常左右の卵巣から交互におこりますが、そのときのホルモン状態によって経血量も異なり、痛みや症状の程度は変わります。
隔月で生理痛がおこる人も少なくありません。これは片側の卵巣に子宮内膜症によるのう胞などの異常や、どちらかの卵巣の感受性が高い(痛みに対して敏感な状態になっている)ことが考えられます。
●年齢や生活環境の変化も生理痛に影響します
一般的に10代後半までは頸管部という部分が細いため、経血を押し出すときに強く痛みますが、それもカラダが成熟するにつれて軽くなるから安心して。また、生活環境の変化から痛みを強く感じることもあります。ストレスなどささいなことが生理痛の引き金になることもあります。
ちなみに「出産すれば生理痛がなおる」という説がありますが、これは出産で子宮口が開いて経血がスムーズに流れ出るようになるため。しかし、だれにでもあてはまるというわけではありません。
●陣痛を促進するホルモンが原因で痛むこともあります
20代の若い女性に比較的多いのが、子宮内膜でつくられるホルモン「プロスタグランジン」の過剰が原因でおこる生理痛です。このホルモンには、子宮をギュッと収縮させる働きがあります。経血を押し出すときに、このホルモンが過剰に分泌されると、子宮がぐんぐん収縮し、痛みを引きおこすというわけです。ちなみに、お産のときの陣痛は、プロスタグランジンの働きによるもの。このホルモンをつくりにくくさせる薬を飲めば、生理痛は軽くなります。
●病気が原因の「器質性月経困難症」は注意が必要
心配な生理痛は病気が原因の場合。子宮内膜症や子宮筋腫などの病気や、炎症などが原因でおこる他の臓器の癒着[ゆちゃく]などが痛みをおこしているケースを「器質性月経困難症」[きしつせいげっけいこんなんしょう]といい、このような場合は、原因となっている病気の治療が必要です。
病院での治療法
●病院に行くかどうか悩んだとき
痛みの程度が軽く、市販の痛み止めを1~2回飲めば大丈夫という程度であれば、必要以上に心配することはありません。ただ、痛みが増してくる、2日目以降も軽くならない、毎回痛くて寝込んでしまうなど日常生活に支障が出るほどなら、婦人科を受診することをおすすめします。
また、最近急に生理痛がひどくなった、痛みに加えて経血量も増えてきた、セックスや排便のときに痛みを感じる場合は、病気が心配されます。「器質性月経困難症」が考えられるので、早めに婦人科へ行き、原因をつきとめましょう。受診するタイミングは悩みますが、このような症状がある場合は生理痛がない時期(生理前や生理中以外)でもかまいません。
●治療の基本は症状をやわらげること
受診すると、まずは病気が隠れていないかどうかを調べます。その結果、とくに病気がないようであれば、それぞれの症状をやわらげる治療が行われます。
痛みに対しては鎮痛剤が処方されます。プロスタグランジンが過剰な人は、その合成を抑える薬を、イライラなどメンタルなトラブルが強い場合は精神安定剤を処方することも。
●避妊薬として知られる「低用量ピル」も選択肢のひとつ
低用量ピルも生理痛に効き目のある薬です。ピルは排卵を抑えるので避妊の目的で使われていますが、生理痛も軽くすることができます。ピルで排卵を止めれば、子宮を収縮させるプロスタグランジンの産生が抑えられるだけでなく、子宮内膜も厚くならないので経血量が軽くなり、痛みを緩和することもできます。ただし、タバコを1日15本以上吸う人は服用できないなどの条件があるので、必ず医師の診断を受けましょう。
●生理痛を改善するための薬と漢方
痛みに素早く対処するには、鎮痛剤が有効ですが、薬だけに飲むのをためらう人も少なくありません。でも痛みがひどくなるまでガマンすると、痛みの原因となる物質が体内に増え、効きにくくなります。鎮痛剤を使うなら、痛みを感じたら早めに飲むのが効果的です。
鎮痛剤以外では、漢方薬もおすすめです。東洋医学では人間のカラダは「気・血・水(き・けつ・すい)」のバランスが大切で、生理痛は「血」が足りない、あるいは流れが滞ることでおきると考えられています。ですから、カラダの冷えや骨盤内の血流の改善、イライラなどの精神症状を抑える漢方薬が有効です。医療機関で処方してもらう場合は保険も適用されますから、価格などの自己負担割合は他の薬と同じような扱いです。自分の症状、体質に合うものはどれか、医師や専門の薬剤師に相談してみてくださいね。
なお、生理痛をやわらげる漢方薬で代表的なものは、次のようなものがあります。
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん):足りない血をおぎない、めぐりをよくします。
加味逍遥散(かみしょうようさん):イライラをしずめ、緊張をやわらげ、自律神経のバランスを整えます。
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん):血の滞りを改善し、めぐりをよくします。冷えやのぼせに効果的。
生理痛のセルフケア
つらい症状を少しでも軽くするために、自宅で簡単にできるセルフケアの方法をいくつか紹介しましょう。
●入浴でカラダをあたため、血のめぐりをスムーズに
対策の基本は、下半身をあたため、血行をよくすること。そこで、まずおすすめなのが入浴です。生理中の入浴は経血量を増やすといわれますが、実際には変わらないので、積極的にバスタブに浸かってくださいね。カラダをあたためる入浴剤や血行をうながすアロマオイルなどを入れればさらに効果的です。
生理中バスタブに入りたくない人は、足湯でも効き目はあります。バケツなどに41~42度くらいのお湯をそそいで足を入れ、15~20分ほど浸かっていると、下半身がポカポカしてきますよ。冷え性にも効果のある、おすすめの対策です。
●リラックスできるアロマやヨガ、ツボ刺激もおすすめです
神経やカラダが緊張していると、より痛みを強く感じてしまいます。なるべくリラックスできるよう、不快な気分をやわらげてくれるヨガ、軽い体操、アロマテラピーなどをとり入れてみて。ハリや指圧[しあつ]でのツボ刺激、マッサージなども血めぐりがよくなっておすすめですよ。いくつか試してみて、自分に合ったリラックス法を見つけてください。
●生理痛をやわらげるおすすめのツボ
三陰交(さんいんこう):内くるぶしから指4本分上のところにあるツボ。親指を押しあて刺激しましょう。全身の血めぐりをよくし、カラダをリラックスさせます。
腎兪(じんゆ):ウエストのいちばん細い所にある背骨から、左右に指2本分のところにあるツボ。親指の腹を押しあて刺激します。むくみや腰の痛みをやわらげます。
●簡単な体操で、下半身の血行をよくしましょう
腰まわし
両足を肩幅に開き、両手を腰にあてた姿勢で、円をえがくようにゆっくりと腰をまわします。右まわし、左まわしそれぞれ20回ずつ行います。
イスにすわって足首のまげ伸ばし
ラクな姿勢でイスに腰かけます。足を少し前に出しかかとを床につけたまま、ゆっくりと両足のつま先をおこし、足首を90度の角度にまげて5つ数えます。ゆっくりもとにもどし、つぎにつま先を立てて、足首と足の甲をしっかりのばし5つ数えます。これを5回ずつ行いましょう。
デスクワークが続くと、ただでさえ下半身の血行は悪くなりがち。生理中にかぎらず、日ごろから習慣にするのをおすすめします。ですが生理痛がつらいときは無理をしないことも大切。自分のカラダと相談しながら、できる範囲で続けましょう。
●豆乳は、生理痛をやわらげ、女性美を磨く、お助けドリンク
「畑の肉」とよばれる大豆から生まれた豆乳には、必須アミノ酸、植物性たんぱく質がたっぷり。そして最大の注目は、女性ホルモンの「エストロゲン」に似た働きをする「大豆イソフラボン」が含まれている点。生理痛の要因はエストロゲン不足が考えられているので、豆乳でおぎなうことで、痛みが緩和できるというわけです。低カロリーでダイエット中も安心。毎日の食事で積極的にとり入れてください。
●生理のときにお酒は飲んでいいの?
生理中のカラダはデリケート。アルコールを分解する力も低下しているので、酔いやすく、体調を崩すことも。少量楽しむ分には問題ありませんが、くれぐれも飲み過ぎに注意しましょう。ただし、鎮痛剤を服用している場合は、薬の効きが悪くなったり、逆に効き過ぎたりすることもあるので、飲むのは避けましょう。またアルコールは血行をよくする一方で経血量を増やすため、2~3日目の多い日はひかえたほうが安心です。飲むときはキンキンに冷えたビールやチューハイではなく、できればカラダをあたためるような赤ワインや日本酒などを選びましょう。
【記事監修医】
西山紘子先生
社会福祉法人 恩賜財団済生会支部東京都済生会
東京都済生会中央病院/産婦人科医