●「ピルに興味あり」「体験済みです」
*25才になっても生理(月経)が安定せず、予定より5~10日遅れることも。友だちがピルを飲んでいるのですが、生理の周期が安定して、生理痛も軽くなったと聞きました。私もためしてみようかな。(マツコ・25才)
*生理不順を改善するためにピルを飲みだして半年。おかげて、きちんと生理が来るようになって。旅行などの予定を立てるときも、以前のように悩まないですみます。(さっちゃん・28才)
*最近カレと話し合って、ピルを飲むことにしました。ドキドキで婦人科へ行ったら、先生が避妊や病気のこともいろいろ説明してくれて。PMS気味だったので、ピルはその治療にも有効と聞き、ラッキー!(まるみん・24才)
ピルについての基礎知識
●ピルを飲むと、排卵が抑えられます
ピルには、卵胞ホルモンと黄体ホルモンの2種類の女性ホルモンが含まれていて、飲むと血中のホルモン(とくに黄体ホルモン)が増えます。黄体ホルモンが増えるのは通常、排卵後。そのためその情報が脳の視床下部に伝えられると、「すでに排卵後のホルモン状態である」と判断されて排卵が起こらない、というしくみになっているのです。
また、ピルに含まれる黄体ホルモンの働きによって、子宮頸管粘液の性質や、子宮内膜を変化させ、妊娠しにくい状態を作る働きもあります。
●主流はホルモン量の少ない「低用量ピル」です
現在、避妊薬として世界中で使われているピルは、含まれているホルモンの量が少ない「低用量ピル」です。日本でも1999年に解禁され、低用量ピルが使用できるようになりましたが、市販薬ではないので、医師の処方箋が必要です。
また、2008年厚生労働省に保険適用された治療用の低用量ピルがありますが、『子宮内膜症に伴う月経困難症』のみが対象となっています。
低用量ピルの飲み方と種類
●毎日1錠ずつ、同じ時間帯に飲みます
ピルの飲み方は、基本的に4週間が1サイクルで1シートとなって販売されています(1シートが21錠タイプと28錠タイプがあります)。
まず生理の初日から毎日1錠ずつ、できるだけ同じ時間帯に飲み、それを3週間続けて、次の1週間は薬を休みます。休んだときに出血が起こりますが、このときの出血は、排卵がない「無排卵月経」です。このパターンを繰り返していきます。
●飲み忘れたらどうする?
飲み忘れたときは、気づいた時点でなるべく早く飲むようにしましょう。半日くらいなら、遅れても薬の効果は途切れず続きます。24時間あいてしまったときは、次の日に2錠飲みましょう。ただ、2日以上飲み忘れてしまったときは、効果が切れてしまうので飲み忘れた日から数えて1週間休んでから、また新たに飲みはじめるようにしましょう。
ピルは3週間続けて服用し、1週間は服用を休みますが、28錠タイプのものは、最後の4~7錠 が偽薬(プラセボ)となっていて、飲み忘れがないように考えられています。また1週間のくぎりがわかりやすいよう、日曜日から飲み始めるサンデーピルもあります。
ちなみに、偽薬の成分は、しょ糖やブドウ糖、乳糖など。飲み続けても、カラダにほとんど影響のないものが使われています。
●低用量ピルは思春期から服用できます
低用量ピルは、生理がはじまった思春期から使うことができ、健康でタバコを吸わない人であれば40代でも飲むことができます。妊娠を希望するときは、服用をストップします。はじめは多少周期の変動がありますが、自然と排卵が起き、生理が訪れるようになります。
●低用量ピルには3種類あります
低用量ピルは、女性ホルモンの配合比率によって、1相性、2相性、3相性の3種類にわかれます。
◎1相性…薬に含まれるホルモンの量がずっと同じタイプ。
◎2相性…黄体ホルモンの量が後半増えるなど、2段階に変化していくタイプ。
◎3相性…黄体ホルモン量が3段階に変化していくタイプ。
どのタイプのピルにするかは、ライフスタイルなども考え、医師ともよく相談して選びましょう。
ピルのメリット
●PMSや生理痛がやわらぎます
ピルを飲むと、自然な状態のときよりも女性ホルモンの量の変動が少なくなり、血中のホルモン量が安定した状態が続きます。
その結果、女性ホルモンの急激な変化によって自律神経が乱れて起こる生理前症候群(PMS)が緩和されます。精神的にも肉体的にも安定し、イライラなどの不快症状がやわらぐのです。
また、子宮内膜の厚みが関係して起こる生理痛も、ピルの作用により子宮内膜の厚みが減ることで、生理時の経血量が減少します。そのため貧血も軽くなります。
●生理不順の改善にも役立ちます
ピルを正しく服用することにより、一定の周期で規則正しく生理がくることになります。つまり、生理をコントロールすることになり、生理不順の改善にもつながるのです。
●子宮筋腫や子宮内膜症の痛みにも
子宮筋腫や子宮内膜症の人は、ピルを飲むことによって痛みを軽くしたり、経血量を減らしたりすることなどが期待できます。
●病気の予防につながることもあります
ピルには、さまざまな女性特有の病気を防ぐ作用があります。
子宮体がんは、卵胞ホルモンが過剰に出て黄体ホルモンが少なくなったときに発生しやすくなるのですが、ピルで一定の黄体ホルモンを保つことで発生率が減ります。
またピルの排卵を抑える作用により、卵巣がんにもかかりにくくなります。排卵のたびに卵巣の表面は破れて傷がつきますが、排卵がないことで、これを防ぐことにつながるのですね。そのほか、卵巣のう腫や乳腺症などの予防、貧血やニキビなどの改善にも効果があります。
●一時的に生理をずらしたいときも、調整可能です
海外旅行や結婚式に合わせて生理をずらしたいなど、一時的に生理周期を調整するときにもピルは役立ちます。一時的な使用には低用量ピルよりもホルモン含有量が多い「中用量ピル」を服用することが多いですが、低用量ピルでも可能です。
生理日を早めるには、中用量ピルの場合は生理開始日の5日目から、低用量ピルの場合は生理初日から服用し、生理を起こしたい日の2日前くらいに服用を中止すると出血がはじまります。
生理を遅らせたいときは、排卵があった後、高温期に入ってから飲みはじめます(中用量ピルが一般的)。生理予定日の5日前くらいから薬を飲みはじめ、妊娠中と同じようなホルモン状態にすることで生理を遅らせます。服用をやめて2~3日後には生理がはじまります。ふだんから低用量ピルを服用している人は、1相性のピルを飲み続けていれば、その間、生理を遅らせることができます。
いずれの場合も直前では間に合わないので、予定している2~3ヵ月前には婦人科へ相談しに行きましょう
●避妊に失敗したときの、緊急手段としても
コンドームが破れたり、はずれてしまったりというような失敗があったとき、セックスしてから72時間(3日間)以内に中用量ピルを2 錠、その12時間後に2錠ピルを飲んで、受精卵の着床を防ぐという緊急避妊手段をモーニングアフターピルといいます。これはもともと、アメリカでレイプ被害にあった女性への対策でした。
ピルは2回にわたって飲みますが、低用量ピルと違いホルモン量が多いので、頭痛、吐き気などの副作用が起こります。
ピルの副作用
●飲みはじめに、吐き気や頭痛があることも
ピルを服用し始めて1~2ヵ月は、吐き気や嘔吐、頭痛、乳房の張りや痛み、不正出血などの副作用がみられることがあります。多くの人は飲み続けているうちに、これらの症状は自然と消えていくようですが、ガマンできないときは、医師に相談してください。副作用を抑えるクスリもありますが、種類を変えると、ラクになる場合もあるようです。
●ピルの服用をひかえたい人、避けたい人とは?
ピルを飲んでいると、血管のなかに血のかたまりができる血栓症[けっせんしょう]のリスクが高まることがわかっています。ただし、低用量ピルで血栓症が起きるのは、ごくまれです。
また、乳がんリスクが増す可能性は小さいのですが、子宮頸がんの発生率はわずかですが増えるという報告があります。ピル自体に発がん作用があるわけではないのですが、がんのあることを知らずにいると、ピルを服用することで検診が遅れてしまったり、コンドームを使わないことでウイルスの感染リスクが高まったりすることもあるのです。そのため、ピルを使うときは、事前の検診と、パートナーがコンドームを併用することが必要でしょう。
家族に若くして心筋梗塞[しんきんこうそく]や脳梗塞[のうこうそく]を起こした人がいて血栓症のリスクが高い人、乳がん・子宮頸がんをわずらっている人、35才以上でタバコを吸っている人、肝臓や腎臓・心臓に病気がある人、コレステロール値や中性脂肪値の高い人、血糖値の高い人、高血圧の人などは医師とよく相談してください。
【記事監修医】
西山紘子先生
社会福祉法人 恩賜財団済生会支部東京都済生会
東京都済生会中央病院/産婦人科医