無月経の種類と原因
妊娠や授乳などの理由でおこる無月経(=生理的無月経)に対して、生理的な理由もないのに生理が止まってしまう状態を続発性無月経といいます。なんらかの原因で、脳の視床下部、脳下垂体、卵巣の連動がうまくいっていない状態です。以下のような理由が考えられます。
●ストレス性(心因性)無月経
原因のひとつとしてまずあげられるのがストレス。生理はストレスのバロメーターともいわれているほどで、受験、就職、失恋、引越しなどがストレスとなり、無月経をおこすこともよくあるのです。
●無理なダイエットによる体重減少性無月経
極端なダイエットをしたために、生理が止まってしまったという人はとても多く、とくに若い女性に多いことが心配です。
人間のカラダのなかでは、生命を守るためにさまざまな臓器が働いています。そのためにもっとも大切なのは、心臓や肺、脳などの器官。それにくらべると子宮や卵巣などの生殖機能は、直接には命を守ることに関係する器官ではありません。そのため、ダイエットで栄養不足になると、限られた栄養は心臓などに優先され、生殖機能はあと回し。その結果、卵巣は通常のように働くことができず、無月経になってしまうのです。カラダはちゃんと考えているのですね。
体重減少性無月経でとくに気をつけて欲しいのが、思春期です。まだカラダのしくみができ上がっていないこの時期に無理なダイエットで無月経が続くと、将来不妊に悩まされることもあるのですよ。ほんの数ヵ月のダイエットも、行き過ぎると長期間にわたる大きなダメージになることも少なくないのです。
●激しいスポーツによる無月経
女性アスリートに多いのですが、激しいスポーツにより、無月経になることもあります。マラソンや新体操など体脂肪を落とすことが求められるようなスポーツを続けていると、無理なダイエットの場合と同じように、カラダが生存に直接影響のない生殖機能をストップさせて、他の臓器を守ろうとするのです。
しばらくスポーツをお休みしたら、また生理が再開したという例もあります。無月経が長引くと妊娠しづらくなる場合もあるので、気をつけましょう。
●早発閉経
閉経の平均年齢は50~51才ですが、最近はストレス社会のためか、30代で閉経を迎える早発閉経の人が増えています。
早発閉経は、単に妊娠・出産ができなくなるだけでなく、人より早く骨密度が下がって骨粗しょう症になったり、生活習慣病のリスクが増えたりするなど、老化を早めることが心配です。
ただし、健康な女性でも、35才を過ぎたころから、卵巣の老化が始まります。卵巣の機能が低下するとホルモン分泌量が少なくなるので、20代のころとくらべて経血量が減るのはごく自然な現象なのです。
●病気が原因の場合
まれに甲状腺や子宮などの病気が原因で無月経になることがあります。とくにストレスやダイエットなどの原因が思いあたらないときは、病気の可能性も考えてみたほうがいいでしょう。
無月経が症状としてあらわれる病気には、「高プロラクチン血症」「甲状腺の異常」「子宮の病気」などが考えられます。
●婦人科での治療は
無月経の状態が長引けば長引くほど、自力で生理をおこせる可能性は低くなっていきます。妊娠でもないのに、無月経が3ヵ月以上続く場合は、婦人科に相談に行き、必要なときは適切な治療を受けることを考えてください。受診すると、血液検査をしてホルモンの状態を調べます。その結果、ホルモン状態を正常にもどすためにホルモン治療を行う場合もあります。
ホルモン分泌の乱れにも、二段階あります。卵胞ホルモンが出ている場合(第一度無月経)は、黄体ホルモンのみを使用する治療をおこないます。長期の無月経で、卵巣機能が停止していて卵胞ホルモンも分泌不足になっている場合(第二度無月経)は、黄体ホルモンと卵胞ホルモンの両方を使用します。
またホルモン剤のほかに、漢方薬を処方する場合もあります。
【記事監修医】
西山紘子先生
社会福祉法人 恩賜財団済生会支部東京都済生会
東京都済生会中央病院/産婦人科医