初期の卵巣がんの自覚症状は?
卵巣がんは初期には痛みなどの自覚症状はほとんどなく、静かに進行するため、「ちょっとお腹が張っているかな」「少し太ったかな」と思うくらいで、気づきにくい病気です。これは卵巣が、胎児を保護する「骨盤」という大きな空間の中にあるため、かなり大きくなるまで、周囲の臓器を圧迫しないためです。
ただ初期でも、「ウエストが太くなった」「骨盤に圧迫感がある」「おなかが張る」などの症状が出る場合もあります。腫瘍が大きくなると、不正出血、頻尿や便秘、発熱、体重減少、だるさなどで気づくこともあります。
●早期発見するにはどうすればいい?
卵巣の病気には、初期にはっきりした自覚症状がないうえ、子宮がんのような、卵巣がんの検診制度もありません。ですから、子宮がん検診のときなどに、卵巣の検査もあわせて行うことが大切です。早期発見は困難ですが、エコーや画像診断を用いた婦人科の検査で、ある程度の判定は可能です。卵巣がんが発生していた場合でも、積極的に卵巣の定期検診を受けていたことで、手遅れになる前に予測がつき、早期治療ができる場合もあります。
卵巣がんにかかりやすい人はどんな人?
卵巣がんは、30代以降から閉経期の女性に多い病気ですが、まれに10代や高齢の患者さんもおり、すべての年代の女性が気をつけなくてはいけない病気といえます。特にリスクが高いのは、以下のような人です。
・未婚・未産の人
・親や姉妹に卵巣がんの患者がいる人
・肥満の人
・糖尿病、高血圧の人
・喫煙者
卵巣がんにはどんな種類があるの?
卵巣にできる悪性腫瘍には、若い世代(10-20才代)を中心に発生する「卵巣胚細胞腫瘍」と中高年女性(40-60才代)を中心に発生する「上皮性卵巣がん」があります。
*卵巣胚細胞腫瘍
卵巣の中の胚細胞にできるがんです。発生率が低く、抗がん剤がよく効くため、治療ではできるだけどちらかの卵巣を残し、妊娠の可能性を残すようにするのが一般的です。
*上皮性卵巣がん
卵巣をおおう上皮にできるがんです。卵巣がんのほとんどを占め、卵巣がんといえば一般的にこの上皮性卵巣がんを指します。その中でも抗がん剤がよく効く「漿液性腺がん」「類内膜腺がん」、抗がん剤が効きにくい「明細胞腺がん」「粘液性腺がん」の4タイプに大きく分けられます。
卵巣がんの検査はどんなふうにするの?
検査、診断は一般に次のように行われます。
卵巣がんにはどんな治療方法があるの?
治療の基本は切除手術ですが、がんの組織を取り除いたうえで、抗がん剤による化学療法も行います。卵巣がんは、がんの中でも抗がん剤が効きやすいといわれていて、近年は新薬の開発により、長期生存率もアップしています。
初期に発見できて、将来、妊娠や出産を望む場合は、がんの性質をよく見極めたうえで、病巣のない卵巣や卵管を残して切除手術をする場合もあります。進行した場合は両方の切除手術が必要になります。
【記事監修医】
西山紘子先生
社会福祉法人 恩賜財団済生会支部東京都済生会
東京都済生会中央病院/産婦人科医