女性は男性よりお酒に弱い?
お酒に強いか弱いかは、基本的に遺伝によって決まっています。しかし、よく男性よりも女性の方がお酒に弱いといわれるのはなぜでしょうか。その理由を知る前にお酒が体内で分解される仕組みについて知っておきましょう。
お酒は、まず胃や腸で吸収され、次に肝臓でアルコールの分解が始まります。この分解が遅い人はお酒に弱い人で、分解が速い人はお酒に強い人です。
お酒の分解には酵素が必要になります。日本人は、この酵素が遺伝的に少ないか、その働きが弱い人が多く、そういう人がお酒を飲むと、顔が赤くなる、動悸がする、頭痛がするといった状態になります。
一般的に、男性は女性よりもお酒を分解するスピードが速いため、女性よりもお酒に強いといわれています。これは、単純に男性は女性よりも体重が重いことから、血液量も多くなり、アルコールの分解に有利と考えられます。
しかし、それだけではありません。女性のカラダの構成と女性ホルモンが関係しています。女性は男性よりも脂肪が多いカラダつきをしていますが、アルコールは脂肪にはまわりにくく、脂肪はアルコールの分解には役に立ちません。また、女性ホルモンである卵胞ホルモンがアルコールの代謝を遅くする働きがあります。
さらに、性別だけでなく、体重や年齢もアルコールの分解能力に影響します。年齢を重ねると代謝が悪くなるので、アルコールの分解にも時間がかかります。
生理中にお酒を飲んでも問題ない?
女性の場合、飲酒して良い時期とダメな時期があります。妊娠中は、アルコールの胎児への影響を考えてお酒は控えるべきです。生理中は、必ずしもお酒を飲んではいけないわけではありません。ただし、経血によって体内の血液が減っていて、アルコールの分解に普段よりも時間がかかるので、普段より控えるのがベストでしょう。
また、生理前に体調が悪くなる月経前症候群(生理前症候群)(PMS)や、生理中の不快な症状がある場合は、飲酒によって症状が助長されることがあるので気をつけましょう。
生理をコントロールしている女性ホルモンは身体面だけでなく、精神面にも影響を及ぼします。生理前や生理中にイライラしたり、落ち込んだりする傾向のある人もお酒に頼ることは逆効果になりますので気をつけてください。
生理中にお酒を飲むデメリット
生理中はお酒がいけないわけではありませんが、好きなだけ飲んでよいわけでもありません。そもそも、生理中かどうかに関わらず、お酒の量が増えると、肝臓に負担をかけます。多量のお酒を飲み続けると、アルコール性肝障害や肝硬変になる恐れがあるのです。生理中は体内の血液が失われるのと、子宮周辺に血液が集中することで、肝臓に向かう血液量は普段より少なくなっています。したがって、生理中は普段よりもお酒の量は控えたほうが良いといえるのです。
生理中は血液量が少なくなることで、脱水や貧血をおこしやすい時期です。貧血になりやすいため、体内では酸素が不足してしまい、頭痛やめまいなどの症状があらわれることもあります。生理中に頭痛やめまいがある人は、お酒を多量に飲むことで症状が悪化する可能性があるので注意しましょう。
女性のなかには、生理中に精神的な影響を強く受ける人がいます。たいした理由もないのに落ち込んでしまったり、イライラしたりしてしまうのです。そういった症状を紛らわそうとお酒を飲むことはおすすめできません。一時的には気が紛れるかもしれませんが、お酒に頼ってしまうと、依存症になる可能性が高まります。生理の影響で精神的なバランスが保ちにくいときには、迷わずに産婦人科で相談しましょう。
生理中にお酒を飲む場合の注意点
まず、生理によって体内から血液が失われているので、脱水には気をつけないといけません。お酒は利尿作用があることで知られています。お酒を飲むとトイレにいきたくなるのはこのためです。脱水を防ぐためにお酒だけでなく、水も一緒に飲むのがおすすめです。また、お酒でカラダを冷やさないように、赤ワインやお湯割りの焼酎などカラダを冷やさないお酒を選びましょう。
生理痛を抑えるために鎮痛剤を使用する場合は、アルコールは避けてください。アルコールによって薬の効果や副作用が増す恐れがありますし、肝臓や胃への負担が大きくなるからです。もし、鎮痛剤を服用する場合は、少なくとも2~3時間あけてからお酒を飲むようにしましょう。
生理前のお酒も注意が必要?
女性のなかには生理前にPMSを引きおこす人がいることがわかっています。頭痛や肩こり、吐き気といった身体的症状から、イライラや集中力の低下、気分の落ち込みなど精神的症状まで不調のあらわれかたは人によってさまざまです。
PMSの原因に女性ホルモンや神経伝達物質などが関係しているといわれていますが、詳しいことはわかっていません。ホルモンの分泌によってカラダが敏感になっている時期なので、多量にお酒を飲むことは控えるのが無難です。また、不快な症状をやわらげようと、お酒に頼ることはとても危険です。不快な症状が辛くて生活に支障が出るのであれば、一度産婦人科で相談することをおすすめします。
生理中のお酒はほどほどに!
生理が始まったからといってお酒を飲んではいけないわけではありません。しかし、生理中は経血によって体内の血液量が少なくなっているということを頭に入れておきましょう。脱水に注意をして、「お酒を飲んだら、お水も飲む」という飲み方を意識し、お酒の分解にはいつも以上に時間がかかることを忘れてはいけません。周囲のペースに合わせてお酒を飲むことは避け、自分のペースで無理なくお酒と付き合いましょう。
【記事監修医】
西山紘子先生
社会福祉法人 恩賜財団済生会支部東京都済生会
東京都済生会中央病院/産婦人科医