まずは知っておきたい!生理痛がおこるメカニズム
そもそも、どうして生理は毎月くるのでしょうか。女性のカラダの中では、一定のサイクルで女性ホルモンが変化しています。それは毎月子宮内膜に栄養をため、妊娠に備えるためです。しかし、妊娠しなかった場合、子宮が収縮して不要になった子宮内膜を血液とともに体外へ排出します。これが生理です。
生理痛があるのは、子宮にある筋肉が収縮するためです。痛みの強さは、子宮内膜の厚さによっても変わるといわれています。子宮内膜が厚く、体外へ排出される血液や内膜が増えるほど、子宮を強く収縮させなければならないためです。その一方、子宮内膜が薄いほど体外へ排出される血液や内膜が減るため、一般的には加齢とともに子宮の収縮は弱くなり、生理痛が軽くなる傾向があります。
生理中の悩みにあわせて食べ物を選ぼう
生理痛の重さは、子宮内膜の厚さによるだけではなく、カラダの冷えも影響しているといわれています。冷えにより血行が悪くなると、酸素や栄養が子宮までうまく届かずに子宮の機能が低下してしまいます。生理中はカラダが温まる食べ物を摂るよう心がけましょう。
また、生理中は食欲が増して太りやすくなったり、むくみや貧血をおこしやすくなったりします。これらの症状を予防できる栄養素をしっかり摂ることが大切です。次に生理の悩みにあわせた食材を紹介しますので参考にしてください。
生理中の食欲増加
食欲対策には、血糖値を安定させる低脂肪・高たんぱくの赤身肉と食物繊維がおすすめ。血糖値が低下すると食欲が増加するため、食欲を抑えるためにも効果的な組み合わせです。
生理中のむくみ
むくみを予防するには、まず塩分を控えめにすることが大切です。むくみを悪化させる甘い飲み物や炭酸飲料も控えるようにしましょう。
生理中の貧血
経血量が正常よりも多い過多月経の場合、鉄欠乏性貧血のリスクが高まります。生理中は貧血を予防するためにも鉄分をしっかり摂りましょう。鉄分を多く含む牛肉やほうれん草、レンズ豆、ひじき、プルーン、レバーなどを食べるようにすると良いでしょう。
生理中の下腹部痛・無気力感
カフェインには生理中の下腹部痛や無気力感をやわらげる効果が期待できますので、生理中は適度にコーヒーや緑茶を飲むのも効果的です。
※個人差があります。
どんな食材を摂ればいい?生理痛をやわらげる食べ物とは
生理痛をやわらげるには、ホルモンバランスを整え、カラダを温めて血行を良くする効果が期待できる食べ物を摂取しましょう。
ホルモンバランスを整える効果が期待できる食材としては、女性ホルモンのひとつである卵胞ホルモンと似た働きをするイソフラボンを含む大豆食品が代表的です。納豆や豆腐、味噌、豆乳など、普段の食事に取り入れやすい食品を積極的に食べましょう。
カラダを温めてくれる食材としては、生姜が代表的。生姜はすりおろして豆腐に乗せたり、味噌汁やスープに加えたりするといった食べ方もおすすめです。リラックスタイムに、すりおろした生姜を紅茶に足してジンジャーティーを楽しむのもいいですね。
また、カラダの調子を整える良質なたんぱく質を含む、鶏肉や牛肉、青魚も生理中におすすめの食べ物です。サンマやアジなどの青魚には、必須脂肪酸であるDHAやEPAが豊富に含まれているため、生活習慣病の予防効果も期待できます。
生理中に食べたいカラダにやさしいメニュー
生理中はカラダを温めてくれる食事が大切とはいえ、一体どんなレシピが良いのでしょう。次に生理痛があっても食べやすいおすすめレシピを紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
鶏がゆ
重い生理痛があり、お腹は空いているけれど量は食べられないときにおすすめなのが、鶏がゆです。レトルトのおかゆに鶏ひき肉を加えて煮込むだけなので、食事の用意をする気力がないときでも手軽に作ることができます。食べるときに生姜やごま油、塩などで軽く味付けすれば、中華がゆのような味わいになり、おいしく食べられます。
ミネストローネ
生理中に食欲旺盛になってしまう場合は、旬の野菜をたっぷり使用したミネストローネがおすすめです。ヘルシーなのに食べごたえ十分で、不足しがちな食物繊維もしっかり補給できます。
作るときのポイントは、大き目にザク切りにした野菜を中火でしっかり炒め、野菜から水分が出切ったタイミングで水を入れてコトコト煮込むこと。野菜の旨味と栄養が凝縮されたスープで、辛い生理期間を乗り切りましょう。
酸辣湯[サンラータン]
カラダの冷えを解消するには、生姜を使ったレシピがおすすめ。生姜を使ったレシピはたくさんありますが、ここで紹介するのは豆板醤と生姜を使った酸辣湯。血行促進効果を持つキクラゲを加えればより高い効果が期待できます。
作り方は、まずキクラゲは水につけて戻しておき、タケノコとにんじん、しいたけ、さらに細切りにした長ネギをチキンスープベースの鍋に入れて中火にかけましょう。野菜が柔らかくなったタイミングで溶き卵を入れ、すぐに火を止めれば完成です。
食べ物以外で生理痛をやわらげる方法は?
食べ物を工夫しても、重い生理痛に悩まされ続ける人もいるでしょう。そんなときはギリギリまで痛みをガマンするのはやめて医師に相談を。
また、鎮痛剤の副作用や習慣性が心配で気軽に服用できない人もいるかもしれませんが、鎮痛剤には習慣性はないといわれています。痛みが強くなった状態で服用しても、すでに痛みの原因物質が大量に分泌されているためあまり効果は期待できません。毎回重い生理痛に悩まされているようであれば、痛みを感じたら早めに服用するとよいでしょう。
生理痛の原因となるのは、黄体ホルモンの作用により子宮内膜から分泌されるプロスタグランジンというホルモンです。プロスタグランジンは、子宮を収縮させて不要になった子宮内膜を排出させる作用を持つものですが、過剰に分泌されると子宮の収縮が強くなる分、痛みも強くなります。
このプロスタグランジンが血流に乗って全身にまわると、頭痛や腰痛の原因にもなります。鎮痛薬はこのプロスタグランジンの分泌を抑制するものであるため、早めの服用が大切なのです。
ただ、月経困難症のように日常生活に支障が出るレベルの生理痛の場合、鎮痛薬が効かない場合もあります。そんなときは、婦人科で相談しましょう。痛みをやわらげるために、低用量ピルを服用する方法もあります。低用量ピルは避妊のイメージが強いですが、生理痛が重い人に処方されることもあります。
低用量ピルを服用すると排卵が止まり、黄体ホルモンの分泌が抑制されるため、痛みの原因物質であるプロスタグランジンの分泌も抑制でき、生理痛の予防につながります。低用量ピルは医師の処方箋が必要なので、希望する場合は婦人科で医師に相談しましょう。
生理痛は食べ物から見直しましょう
今回は生理中におすすめの食べ物を取り上げましたが、「冷えは万病のもと」といわれるように、思わぬ病気を引きおこす原因となるものです。普段の食生活にも取り入れて冷えを予防しましょう。
ただ、食べ物やメニューをひとつずつ覚えるのはとても大変ですよね。カラダを冷やす食べ物は、夏が旬の食材や暑い地域で収穫されるもの。カラダを温める食べ物は、冬が旬の食材や寒い地域で収穫されるもの、と覚えておくと食材選びに役立ちます。旬の食材は栄養も豊富で味も良いですから、積極的に食べましょう。
もし、食べ物や生活習慣を工夫しても症状が緩和されず、鎮痛剤を服用しても痛みが強い場合は、何らかの病気が原因の可能性もありますので、早めに婦人科で診察を受けましょう。生理は閉経を迎えるまで長い期間付きあう必要がありますから、できるだけ生理期間を快適に過ごせるように工夫することが大切です。
【記事監修医】
西山紘子先生
社会福祉法人 恩賜財団済生会支部東京都済生会
東京都済生会中央病院/産婦人科医