生理周期は女性のカラダに影響を与える
生理は性成熟期の女性にとって生活と切り離せない存在です。この時期の女性のカラダは、生理周期によって日々大きな影響を受けています。生理周期のリズムを作り出しているのは、卵胞ホルモンと黄体ホルモンなどの女性ホルモンの働きです。
生理の時に体調不良を感じやすかったり、月経前症候群(生理前症候群)(PMS)になったりするのもこのホルモンバランスが大きく関係しているのです。また、逆に、1ヵ月のうちのある時期に体調が良かったり、気分が明るく前向きになれたりするのも、生理周期が少なからず関係しています。
では、生理周期の基本的な流れをおさらいしておきましょう。生理周期は増殖期(卵胞期)・排卵期・分泌期(黄体期)・月経期にわけることができます。
まず、生理が終わるころから卵胞ホルモンが徐々に増え、子宮内膜も増殖を始めるのが増殖期(卵胞期)です。この時期は基礎体温が低い低温期。そして卵胞ホルモンの量が最も増え、卵巣から卵子が排出されるのが排卵期です。次に、分泌期(黄体期)を迎え、卵胞が黄体というものに変化し、黄体ホルモンを大量に分泌します。黄体ホルモンによって子宮内膜が柔らかい状態になり、基礎体温は高温期に突入します。妊娠しなかった場合には受精卵のベッドとして用意されていた子宮内膜が剥がれ落ち、血液と一緒に排出されて生理が起き、月経期に入ります。
この生理周期は一定の間隔で起きるのが普通ですが、生理周期の長さから健康状態やホルモンバランスを知ることができます。女性ホルモンや卵巣の働きが正常かを知る手掛かりになるので、自分の生理周期をよく把握しておきましょう。
正常な生理周期とは?
生理周期とは、生理の初日から、次の生理の前日までの日数のことを指します。この生理周期は28日間といわれることが多いですが、実際にはかなり個人差があり、一般的には、25~38日の周期が正常の範囲内。これより短かったり長かったりする場合は、生理不順となります。
生理周期は、カラダの健康状態を示すバロメーターとなるので、生理周期を計算・管理して、できるだけ正確な生理周期を把握しておくことがおすすめです。
自分の生理周期を知りたいなら、カレンダーに印を付け確認していくのが良い方法です。まず、生理が始まった日に1と記入し、次の日から2、3、4と日にちをカウントしていきましょう。次の生理が始まったらその日を1とし、再びカウントを繰り返していきます。
健康な女性でも生理周期は予定日から2~5日ズレることは珍しくありません。また、精神的なストレスや多忙などが原因で1週間ほどズレることもあります。できるだけ正確なデータを取るには、3回分以上のデータを取って平均的な周期を割り出すのがポイントです。
生理周期が短い原因は?
データを取ってみると、自分の生理周期が正常でないことに気がつくことがあります。生理周期が短く、24日以内の場合は「頻発月経」に当てはまります。生理が頻繁にくるうえに、だらだらと出血が続くケースも多く、不安に感じる人は少なくありません。
実は、初潮を迎えたばかりの時期や、閉経前には頻発月経が起こりやすいものです。性的に成熟していない思春期や、卵巣の機能が低下する閉経直前に頻発月経が起きるのはそれほど心配ありません。積極的に治療をするのではなく、経過を観察することになります。
ただし、性成熟期の女性の頻発月経には注意が必要です。「卵胞期短縮症」や「黄体機能不全」などの病気が隠れている可能性があります。簡単に説明すると、「卵胞期短縮症」とは増殖期(卵胞期)が短くなる病気のことで、「黄体機能不全」とは分泌期(黄体期)が短くなる病気のことです。増殖期(卵胞期)・分泌期(黄体期)のどちらが短くなっても、それによって生理周期が短くなってしまいます。そのため、生理周期が24日以下になってしまうのです。
卵胞期が短くなると、生理から排卵までの時間が少なくなります。低体温期は通常14日ほどですが、「卵胞期短縮症」の場合はこの低温期の日数が短いのが特徴です。
一方、「黄体機能不全」とは、脳や卵巣の異常が原因で、妊娠を継続するために役立つ黄体ホルモンの分泌が不足する症状です。排卵から次の生理が始まるまでの期間が短くなります。排卵後に体温は上昇し高温期が訪れますが、高温期が通常よりも短い場合には黄体機能不全の可能性があります。
日頃から基礎体温をチェックしておくと、低温期や高温期の日数が極端に短くなっていないか調べることができるので試してみましょう。
生理周期が短いままだとカラダに悪影響があるかも
生理周期が短い場合は、自己判断せず専門の医療機関に行くようにしましょう。婦人科に行くのは緊張しますし、恥ずかしさや不安を感じて診察を受けるのをためらってしまう人もいるかもしれませんね。でも、頻発月経を放っておくとカラダへのリスクが高まります。
特に、妊娠を望む女性にとって、頻発月経は不妊の原因となるので深刻な問題です。卵胞期短縮症が原因の頻発月経は、生理から排卵までの卵胞期が短いのが特徴。排卵が起きるまでの期間が短いので、卵子が未成熟のまま排卵されることがあります。卵子が成熟していないとうまく受精できなかったり、せっかく受精しても流産してしまったりするのです。
黄体機能不全が原因で生理が短くなっているケースでも、不妊症や流産を引き起こしやすくなります。黄体がうまく働かず、黄体ホルモンの分泌が少ないので子宮内膜が十分に発達しません。そのため受精卵が着床しにくく、たとえ着床できてもすぐに生理が始まって妊娠が中断されてしまいます。妊娠を望んでいる場合は特に、早めの治療が必要です。
また、頻発月経には別の問題もあります。頻発月経になると貧血になるケースがあるのです。生理周期が短いと1ヵ月の間に2回も3回も生理があることになります。このように、生理の回数が増えると当然経血量も多くなり、体は慢性的な貧血状態になります。貧血による血行不良が原因で、カラダがだるく疲れやすく感じるなど日常生活に支障をきたすことも少なくありません。
頻発月経の治療法はある?
頻発月経は妊娠を望んでいない場合には、貧血や不正出血などの症状がない限り治療は必要ありません。でも、将来妊娠したいと思っている人や、そのほかの不安を感じる人は治療が必要です。
卵胞期短縮症かどうかを調べるには、検査を受ける方法があります。基礎体温を測って低温期の長さをチェックしたり、血液検査で卵巣機能の低下がないかを調べたりします。
治療で用いられるのは内服薬・注射薬・点鼻薬の3つです。内服薬や注射薬には、排卵誘発剤が使われ排卵を促す働きをします。点鼻薬は、ホルモンバランスを整える役割をします。このようにして短くなっている卵胞期を正常な長さに戻す治療が行われるわけです。
黄体機能不全かどうかは基礎体温のチェックや血液検査に加え、子宮内膜組織の着床しやすさを調べたり、超音波検査で子宮内膜と卵胞を見たりすることによって判断できます。
黄体機能不全の治療で用いられるのは、主に内服薬と注射薬です。卵胞が正常に成長するために、排卵誘発剤の内服薬を利用します。また、黄体ホルモンを補充する薬や、黄体の形成、維持を助ける性腺刺激ホルモンを補う薬も用いられます。
病気が隠れている可能性も!病院で検査を受けましょう
生理の周期が短く24日以下の人は、頻発月経の疑いがあります。頻発月経が起きる背景には卵胞期短縮症や黄体機能不全などの病気が隠れている可能性もあります。特に、妊娠を望む人や貧血の症状に悩んでいる人は、症状を放置するのは危険です。
また、頻発月経と思っていたら実は不正出血だったというケースもあります。子宮内膜ポリープや子宮体がんなど、出血をともなう病気の可能性もあるので、やはり自己判断せず医師の診察を受けるようにしましょう。
【記事監修医】
西山紘子先生
社会福祉法人 恩賜財団済生会支部東京都済生会
東京都済生会中央病院/産婦人科医