月経過多とは?
月経過多とは、経血量が異常に多い状態をいいます。学問的には、月経期の経血が140ml以上であれば「月経過多」と定義されていますが、これを厳密に計測するのは非常に困難です。そのため、他に内科的原因がない場合は貧血の有無で判断し、貧血になっている場合に月経過多の可能性があると診断されます。
慢性的な月経過多だと、その状態に慣れてしまってカラダの異常に気付かない場合もあります。月経過多は、月経痛や無月経と比較すると異常の発見が難しく、不調のサインを見逃してしまうケースが多いです。経血量の増加に加えて、検診や人間ドックなどで貧血を指摘された場合は、できるだけ早めに婦人科で診察を受けましょう。
月経過多の症状をチェック
経血量が多いかどうかの判断基準は、昼でも夜用のナプキンを使う日が月経期間中に3日以上ある、普通のナプキン1枚では1時間ももたないなど、このような場合は経血量が多いと判断しましょう。
また、経血にレバーのような大きな血のかたまりが混ざることも、月経過多の特徴的な症状です。以前よりも経血量が増え、月経期間も長びいているようであれば、一度婦人科で相談しましょう。
もし、普段から立ちくらみやめまいがあり、動悸や息切れをおこしやすく、疲れやすい、カラダがだるいなどの症状があれば貧血が疑われます。血液検査の結果で、血液中の鉄が少ないと指摘された経験がある人は注意が必要です。
月経過多になる原因とは
月経過多の原因はさまざまあり、年齢によっても変わります。若いうちはまだホルモンバランスが安定しないため、無排卵周期や黄体機能不全などにより出血を生じ、その結果として月経過多をおこしている場合があります。
思春期の月経過多は、卵巣機能の成熟にともなってホルモンバランスが安定してくると、次第に症状が落ち着いていきます。ただし、ホルモン検査の結果、異常がない場合は血液凝固障害などの内科的疾患が原因となっている可能性もあります。
20~30代頃の性成熟期では、子宮筋腫や子宮腺筋症、子宮内膜ポリープなどの疾患が、月経過多の原因である可能性が高まります。特に30代以降の女性では、これらの婦人科疾患が増えていく傾向がみられます。
更年期になると、卵巣機能の低下にともなう無排卵周期が原因として増えていきます。しかし同時に、子宮筋腫や子宮腺筋症、子宮内膜増殖症、悪性腫瘍のリスクも高まります。何らかの疾患が原因で月経過多になっている場合、早期発見と早期治療が大切です。仮に子宮頚がんや子宮体がんでも、早期に発見できれば治る可能性は高いです。異常を感じたらできるだけ早めに婦人科で検査を受けるとともに、年に1回は婦人科検診を受けて異常の早期発見に努めましょう。
月経過多の正しい対処法は?
月経過多の治療は、生活スタイルや年齢、症状などによって大きく変わりますので、医師とよく相談して治療法を選択しましょう。次に症状を緩和させる対処法を紹介します。
栄養バランスのよい食事
月経過多になった場合、鉄欠乏性貧血を合併している人が少なくありません。そのため、まずは鉄分の多い食事を心がけましょう。鉄分の推奨摂取量は、月経のある成人女性で1日あたり10.5〜11.0mgとされています。鉄は吸収率の低い栄養素のため、栄養バランスのとれた食事を3食きちんと食べることが大切です。
カラダを冷やさない
カラダの冷えが経血量の増加につながっていることもあるため、カラダを冷やさないように心がけましょう。ただし、マッサージやエステなどは血流を良くしカラダを温める効果が期待できるものの、経血量が増えてしまうリスクもあります。月経過多の症状が重い場合は、マッサージなどは控えましょう。
月経用品を使いわける
月経のたびに経血がモレてしまうと、気分的に憂うつになる場合があります。そんなときは、月経用品を上手に使いわけて対処するようにしましょう。ライフスタイルや時期にあわせて使いわけるのがポイントです。
低用量ピルの服用
月経過多で受診した場合、治療方法のひとつとして低用量ピルの服用が選択されることもあります。低用量ピルは避妊薬のイメージが強いですが、排卵を抑えホルモンを内服することでバランスが整う効果が期待できます。
また、ピルの作用により子宮内膜の厚みも減少するため、経血量が減る可能性も高いです。貧血症状が軽くなるほか、月経痛が緩和される、月経期間が短くなる、といった効果も期待できます。月経過多の治療は、生活スタイルや年齢、症状などによって大きく変わりますので、医師とよく相談して治療法を選択しましょう。
症状がひどい場合は婦人科で相談しましょう
月経過多を放置してしまうと、貧血が悪化する場合があります。貧血の症状は、めまいや疲労、脱力感に始まり、数ヵ月かけてゆっくり進行していきます。
月経過多の原因はホルモンバランスの乱れが多いですが、子宮筋腫や子宮腺筋症、子宮頚がんや子宮体がんなどの女性器疾患が原因であることも少なくありません。月経過多の症状に気が付いたら、できるだけ早めに婦人科で医師に相談しましょう。
月経過多の治療は原因を特定することが大切ですので、診察を受ける際は、普段の生活スタイルや症状のあらわれ方、生活への支障度などを整理しておくと、医師の問診がスムーズになります。
経血量は個人差が大きく、自分の経血量が正常範囲かどうか判断しにくいものですが、普段と比べて経血量が増えたり、月経期間が長引いていたりする場合は婦人科で診察を受けることをおすすめします。
【記事監修医】
西山紘子先生
社会福祉法人 恩賜財団済生会支部東京都済生会
東京都済生会中央病院/産婦人科医