そもそも不正出血とは?
不正出血とは、通常の生理周期とは関係のない時期におこる性器からの出血のことです。正しくは「不正性器出血」といいます。性器とは内性器と外性器のことをいいますが、内性器とは子宮、卵巣、卵管、膣などのことを指し、外性器とは外陰部と膣の一部を指します。これらのどこかから出血すると、不正出血として症状があらわれることになるのです。
不正出血はおこる原因によって2つに分類することができます。ホルモンの分泌が乱れて出血をおこしている場合は「機能性出血」、病気が原因で出血している場合は「器質性出血」になります。生理でもないのにナプキンが必要で、鮮やかな出血が2~3日続いても、茶色っぽい血がおりものに混じっていても、どちらも不正出血です。
さらに、出血量が少ないときには黄色っぽくなることもあります。ただし、出血量が少ないから安心というわけでもないので注意してください。少量の出血でも、検査をしてみると子宮がんがみつかることもあるのです。また、鮮やかな色の出血だから重症とか、茶色だから安心などと、出血の色で重症度を判断することもできません。
不正出血とは出血量の多い少ないにかかわらず、生理以外に性器から出血することをいいます。出血量や血の色によって、出血している原因や部位などを推定することはできません。子宮がんのような深刻な病気かもしれませんし、ホルモンの分泌が乱れて出血しているだけのものかもしれません。つまり、生理の時期以外におこった出血、不正出血を認めたときには、まずは婦人科で診察を受けて原因をつきとめることが大切です。
不正出血が茶色になる理由
女性のカラダは、ホルモンの働きにより、妊娠に備えて子宮内膜が厚くなったり、剥がれたりを繰り返しています。しかし、ホルモンバランスが乱れて排卵障害をおこしていると、卵子の成長が悪くなり、子宮内膜もうまく育ちません。子宮内膜に厚みがないまま生理が始まると、出血量が少なく排出に時間がかかるため、血液が体内で酸化して茶色い血となって排出されます。
つまり、不正出血の色で考えられることは出血までにかかる時間で、原因を推測することはできません。出血の色が茶色だから、鮮やかな赤色だから、といって出血部位や原因を特定することは不可能です。
茶色の不正出血で考えられる原因は?
生理前後の茶色い不正出血は、心配ないものである可能性が高いです。まず、生理前から子宮内膜が徐々に剥がれはじめているため、最初は出血量が少なく茶色っぽい色になることがあります。すぐに鮮血の生理が始まるようであれば問題ないでしょう。生理の後の茶色の出血も問題ないことがほとんどです。子宮内に長く残っていた経血が酸化して茶色くなり排出されたと考えられます。
基本的に生理前後に茶色の出血がある場合は、子宮内膜の一部である可能性が強いのですが、茶色の出血がダラダラと続くような場合には、他に原因がある可能性もあります。腫瘍からの出血だったり、どこかに炎症があったりするかもしれません。そのようなときは、婦人科で診察を受けて重大な病気が隠れていないか確かめましょう。
また、茶色の不正出血で意外に多いのが、タンポンの抜き忘れ。ヒモを一緒に押し込んでしまうと、タンポンを入れていることを忘れてしまい、茶色の出血や悪臭で気がつくことになります。タンポンの抜き忘れは細菌の繁殖につながり危険です。タンポンを利用する場合は正しく使用するように心がけましょう。
茶色の不正出血で腹痛をともなうときに疑われる病気
生理のある女性が、腹痛をともなう茶色の不正出血を認めた場合、最初に考えるべきことは妊娠の可能性です。妊娠をしているかどうかで、医師の対応も変わってくるからです。特に、出血が生理よりやや軽めの出血の場合は妊娠かもしれません。
女性のカラダのなかでは、受精に成功すると、受精卵が細胞分裂を繰り返しながら子宮内の壁に落ち着きます。これを着床といいますが、無事に着床ができたら、次は胎盤を形成するために絨毛という細胞がお母さんのお腹に入り込みます。こうした過程の中で出血がおこることは少なくありませんし、異常でもないのです。
ただし、着床や胎盤形成時の出血かどうかを判断するのは簡単ではありません。自己判断するのは危険ですから、妊娠をしているかどうかを含めて産婦人科で診察を受けることが望ましいといえます。
次に、妊娠でもなく、生理でもないとき、疑われる病気をいくつか紹介します。
子宮がん
子宮がんは、悪性腫瘍の発症する部位によって、子宮頚がんと子宮体がんの2つがあります。子宮頚がんは性交の経験がある女性であれば誰でも罹患する可能性のあるがんです。がんというと、若い人にはおこりにくいと考えるかもしれませんが、子宮頚がんは比較的に若い人に増えているがんでもあります。早期に発見すると完治するため、子宮がん検診がすすめられています。
子宮体がんは閉経後の女性に多いがんです。閉経したにも関わらず不正出血があるときには、必ず婦人科で診察を受けてください。茶色の不正出血でも同様です。子宮頚がん、子宮体がんともに、初期には痛みがでないこともあり、必ずしも腹痛があるとは限りません。
子宮頚管ポリープ
子宮の入り口にできる良性のポリープを子宮頚管ポリープといいます。ちょっとした刺激で出血をしやすいといわれ、性交や激しい運動をした後に不正出血がおこることがあり、茶色の不正出血も考えられます。腹痛を感じる人もいますが、自覚症状がないことも。まれに、がんがポリープ状になることもあるので、切除をして良性か悪性かの検査確認をするのが一般的です。
子宮筋腫
女性には比較的聞きなれた病名かもしれません。子宮の筋層にできる良性の腫瘍を子宮筋腫といいます。筋腫の大きさやできる部位によって症状が違うので、必ずしも腹痛があるとは限りません。不正出血の他にも過多月経や過長月経になることがあり、貧血があらわれることもあります。
茶色の不正出血でおかしいと感じたら診察を受けましょう
茶色の不正出血とは、出血後に時間が経って酸化してしまい、色が変化してしまったものです。生理前後にみられるときにはあまり心配いりません。生理が始まる前は出血量がまだ少ないために、茶色になってしまうことがありますし、生理が終わった後は、子宮内に残っていたものが後から排出されて茶色くなることがあります。
しかし、茶色の出血がダラダラと続くようであれば、一度婦人科で診察を受けた方がいいでしょう。なかには、子宮がんや子宮頚管ポリープ、子宮筋腫といった病気が原因となっていることも考えられます。基本的に、不正出血の色や量から、出血部位や病気の重症度を推測することはできません。茶色でも鮮血でも、生理以外に出血があれば、病院で出血の原因を調べてもらうのが一番です。
【記事監修医】
西山紘子先生
社会福祉法人 恩賜財団済生会支部東京都済生会
東京都済生会中央病院/産婦人科医