STDってどんな病気?
セックスで感染する病気ですが、原因となる菌や微生物にはさまざまな種類があり、症状や治療法も異なります。
●カンジダ膣炎
◎こんな病気です
カンジダ属の真菌(カビの一種)によっておきる病気です。とくに風邪などで、免疫力が低下していると菌が増殖します。
◎症状
デリケートゾーンや膣に強いかゆみがあります。おりものが増え、白いカス状や白いクリーム状に。性器が赤く炎症をおこすことも。
◎治療法
抗真菌剤の膣錠の膣内挿入
●クラミジア
◎こんな病気です
クラミジア・トラコマティスという微生物が原因。セックスだけでなくオーラルセックスによってノドの粘膜に感染することもあります。また、卵管炎をおこすと不妊症の原因となることも。
◎症状
無症状のことが多いようです。腹痛・排尿痛があることも。おりものが増え、進行して腹膜炎をおこすと腹痛・発熱も。ノドに感染し、咽頭炎、扁挑炎をおこすことも。
◎治療法
抗生物質
●トリコモナス膣炎
◎こんな病気です
トリコモナス原虫が寄生することによっておこる膣炎。男性にも寄生するので、互いの病原菌をやりとりする「ピンポン感染」をおこしやすいのが特徴です。
◎症状
黄色や血液のまじったおりものや、泡がまじったおりものが出ることも。デリケートゾーンにかゆみや痛みがあります。
◎治療法
抗トリコモナス剤の服用と膣錠の併用
●性器ヘルペス
◎こんな病気です
単純ヘルペスウイルスに感染しておこり、一度感染すると、治ったあともウイルスが潜伏、生理(月経)時や体力が低下しているときに再発を繰り返します。
◎症状
初感染はデリケートゾーンに3~7日間軽いかゆみがおこり、のちに痛みのある水疱ができます。水疱がつぶれると排尿時に激しく痛みます。
◎治療法
鎮痛剤、消炎剤の軟膏の塗布、抗ウイルス剤(内服液・注射・軟膏)
●尖圭コンジローマ
◎こんな病気です
ヒューマンパピローマウイルス(HPV)の感染によっておきます(主にHPV6、11型が原因)。セックスやそれに類似する行為により感染します。潜伏期間が長いうえ、感染後1ヵ月~半年たってから症状が出ることも多く、いつ感染したのかわからないことがあります。このウイルスの仲間に、子宮頸がんの原因になるもの(主にHPV16、18型等)があります。
◎症状
最初は膣口や小陰唇、肛門付近にイボができます。その範囲が広がると排尿痛、性交痛などを伴うこともあり、かゆみや灼熱[しゃくねつ]感があります。
◎治療法
5%ベセルナクリーム、10%ポドフィリンアルコールを塗布します。治らない場合は、電気メスやレーザーでイボを切除したり、漢方でイボをとる方法もあります。原因ウイルスであるヒューマンパピローマウイルス(HPV)の感染予防ワクチンが開発されており、現在日本では承認の申請中です。
●淋病
◎こんな病気です
淋菌の感染によっておこり、セックスで感染しますが、まれに抵抗力のない女性や子どもが浴場やプールなどから感染することがあります。
◎症状
おりものが増えたり、排尿痛があったり、デリケートゾーンがかゆくなったりします。
◎治療法
抗生物質
●梅毒
◎こんな病気です
トレポネーマ・パリダムという微生物の感染によっておこり、感染力が高いもののひとつ。セックスで感染し、長い期間をかけて全身に症状が進行するのも特徴です。
◎症状
初期はほぼ無症状。大陰唇、小陰唇、膣口付近のデリケートゾーンに小さなしこりができ、そけい部(下腹部のうち、足のつけ根の部分)のリンパ節がはれ、それが自然に消えたあと、バラ色の発疹が出ます。とはいえこれもまた自然に消えるので気づかないことが多く、血液検査で診断されます。
◎治療法
抗生物質
●HIV感染症/エイズ
◎こんな病気です
HIV(ヒト免疫不全ウイルス)が免疫細胞に感染、増殖して免疫力が低下する病気です。血液、精液、膣分泌液、母乳などが感染源であり、進行すると死に至ることもあります。
◎症状
感染後2週間ほどで、風邪のような症状が出ます。5~10年ほど症状がなく、カリニ肺炎、カンジダ症などの合併症がおき、エイズが発症します。エイズ発症後は免疫力がなくなり、さまざまな病気で死に至ることもあります。
◎治療法
抗HIV薬でHIV-RNA量を下げます。
そのほか、注意点
※トリコモナス膣炎・カンジダ膣炎は入浴時など、性行為以外でも感染するケースがあります。
※カンジダ膣炎や性器ヘルペス症、尖圭コンジローマは、一度症状が治まっても、カラダの抵抗力が落ちたときに再発することがあります。
※エイズにかかると、感染後しばらくは無症状のことがほとんどで、潜伏期間を経て発病します。そのため、気づかないまま人にうつしてしまう可能性があり、それが大きな問題となっています。もしも少しでも感染の不安があるならば、保健所か婦人科で早めに検査を受けましょう。ほとんどの自治体で、保健所の検査は無料で受けることができます。
どこでHIV検査を受けられるかを調べるときは
「エイズ予防情報ネット」
「HIV検査・相談マップ」
予防と治療法
●セックスのときはコンドームを付けましょう
STD(性感染症)の予防には、セックスのときに最初からコンドームを使用することが第一です。セックスの前には排尿し、シャワーを浴びて、お互いのカラダを清潔にしてから行うようにしてください。不特定多数の人とのセックスを避けるということも大切なことです。また、オーラルセックスでも感染することがありますので、注意が必要です。
●出血をともなうセックスは避けましょう
膣炎などで出血があるのにセックスを行うと、ウイルスに感染しやすくなります。また、生理中のセックス、アナルセックスは避けるようにしてください。
●完全に治るまできちんと治療して
STD(性感染症)で産婦人科を受診したときには、まずデリケートゾーンの様子を見て、内診で膣や子宮の粘膜の状態を調べます。おりものを採取して、細菌やウイルスの有無を調べたり、場合によっては血液検査をしたりすることも。ほとんどのSTDが2週間程度で治りますが、個人差があるので、完全に治るまできちんと治療を続けることが大切です。医師の許可が出るまで、セックスはひかえましょう。
●必ずパートナーといっしょに治療をしてください
感染したときは、必ずパートナーといっしょに治療することを忘れないでください。パートナーには泌尿器科を受診してもらいましょう。あなただけがよくなっても、パートナーが病原体を持っていれば再感染してしまいます。ふたりで一緒に、しかも同時に治すことが大切です。
【記事監修医】
西山紘子先生
社会福祉法人 恩賜財団済生会支部東京都済生会
東京都済生会中央病院/産婦人科医