生理周期は女性の心身に影響を与える!
生理は女性のココロとカラダの両方のコンディションに影響を与えます。カラダに現れる影響は腹痛や頭痛、肩こりなどです。また、ココロに現れる影響は怒りっぽくなる、憂うつになる、集中しづらくなるなどです。
これらの影響が起こる原因はまだはっきりとはわかっていないものの、一般的に考えられているのは女性ホルモンのひとつである黄体ホルモンが増加し、感情のバランスを整えるセロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質に影響を与えるためです。
これら生理の3~10日前から生理が始まるまでの期間に、心身に起こる不快な症状は「月経前症候群(生理前症候群)(PMS)」といいます。また、日常生活に支障が生じるほどの苦みや不快感をともなう生理を、「月経困難症」といいます。症状は、吐き気・頭痛・めまいなどです。生理の影響がひどい人は、気分が落ち込み、うつ状態になってしまうこともあります。このような状態では、大切なイベントと重なってしまった場合、楽しむことが難しくなってしまいます。
生理の時期をずらすことはできる!
生理の時期をずらせることは、あまり一般的には認知されていませんが、ピルの服用で調整することができます。ピルとは、女性ホルモンのリズムを整えるための経口避妊薬です。卵胞ホルモンと黄体ホルモンに似た物質が含まれており、これらのホルモンの働きにより排卵を抑制します。そのため、ピルを服用することで生理の周期を変えることができるのです。ピルの種類はホルモンの成分量によって、低用量ピル、高・中用量ピルにわけられます。
ピルはPMSの改善や卵巣がんなどの発生率の低下、うつ症状といった心的症状の緩和など、避妊の他にもさまざまな効果があります。海外では避妊の目的ではなく、こうした効果を得るために使用されていることが多いです。なお、ピルを購入する際には、産婦人科の処方が必要です。
生理の時期をずらす際には、生理を早めたい場合と遅らせたい場合で服薬する時期が異なってきます。生理を早めたい場合は、生理開始後1週間前後から、約10日間ピルを服用します。服用終了後、2〜3日すると生理が始まるため、生理を避けたい時期の前に生理を移動するようなかたちです。この方法には、低用量ピルを使用することができます。
生理を遅らせたい場合は、生理開始予定日の数日前からピルを服用し始め、遅らせたい日程の最終日まで飲み続けます。生理を避けたい時期の後に生理を移動するようなかたちです。生理を移動させることができる期間は、最長で10日間です。変更した生理日の1ヵ月後ごろには、きちんと通常の生理がきます。
ピルによって生理をずらしたからといって、生理不順になることはありません。この方法では、主に中用量ピルが用いられます。これらのピルを服用した方法では、ほぼ確実に生理の時期をずらすことが可能です。
生理をコントロールするときのポイント
生理の時期をずらす際のポイントは、実際にずらしたい時期の少し前の生理時から、ピルの服用を始めることです。ピルによって生理の時期をずらすためには、少なくとも7日ほどは服薬する期間が必要になります。少し前の生理のときから服用することで、余裕をもって生理をずらすことができるのです。
ピルには副作用もあることを知っておきましょう
ピルは生理時期をずらすことができてとても便利な一方、副作用もあります。ピルを服用すると太ると考えている人がいますが、事実ではありません。ピルの服用によって食欲が増進されることはありますが、薬の服用そのものによって太ることはないと確認されています。
また、ピルの服用によって不妊になることはありません。生理を早める方法で使用される低用量ピルは、中用量ピルよりもホルモン含有量が少なく、副作用が少ないといわれています。
代表的な副作用の症状は主に次の7つです。通常、服用開始から3週間から1ヵ月で軽減することが多いといわれています。
血栓症
まず1つ目は、血管のなかに血のかたまりができる血栓症のリスクが高まるといわれています。ただし、低用量ピルで血栓症が起きるのは、ごくまれです。
不正出血
2つ目は不正出血です。不正出血とは通常の生理ではない時期に、生理のような出血がある症状を指します。生理ではないものの、ピルの副作用により排出されなかった子宮内膜が不正出血となって排出されることがあります。
めまい
3つ目はめまいです。ピルの服用でホルモンバランスが変化することが原因で起こります。
嗅覚過敏
4つ目はにおいに敏感になる症状です。ピルに含まれる卵胞ホルモンは嗅覚を敏感にする作用があります。そのため、妊娠期のつわりのように、においに敏感になってしまう人もいます。
悪心
5つ目は悪心[おしん]です。卵胞ホルモンは嘔吐をコントロールする部位に作用します。ピルを服用することで卵胞ホルモンが増え、悪心の症状が現れる場合があります。
食欲不振・増進
6つ目は食欲不振または増進です。ピルに含まれる黄体ホルモンの作用により、食欲が増すあるいは不振になる場合があります。
胸が張る
そして、7つ目は胸が張る症状です。卵胞ホルモンと黄体ホルモンは両方とも胸の発達に作用します。そのため、ピルの服用を開始した初期には、胸が張る症状が現れる場合があります。
ピルを使用できないケース
副作用が現れるかどうかは、ピルが体質に合うかどうかなどによります。循環器系や乳がんなどの疾患がある人や血栓のできやすい体質の人などは、これらの持病が悪化する可能性があるため、使用が許可されない場合もあるのです。
喫煙も、ピルの服用期間中は血栓症などの副作用発症リスクを高めるため、喫煙者は使用できない可能性があります。その他、年齢や既往歴などによっても変わってくるため、ピルを使用する前に、病院で医師との相談が必要です。
ピルを使えば生理周期はずらせる!まずは病院で相談を
女性のココロとカラダに影響を与える生理。腹痛やめまい、イライラしてしまうなど生理の影響を受けた状態では、大切なイベントを楽しめないだけではなく、仕事の成果などにも大きな影響を与えてしまいます。
生理の時期は経口避妊薬であるピルを服用することによって、ずらすことが可能です。ピルの服用方法は、生理を早める方法と遅らせる方法で異なってきます。生理を早める方法ではイベント当日にピルを服用する必要もないため、より安心してイベントを楽しむことができます。いずれの方法でも、早めの服用開始によって、より確実にイベントと生理が重なることを避けられます。
ただし、ピルには副作用があります。副作用があらわれるかどうかは人によって異なるので、使用する際には病院で医師と相談するなどし、十分な検討が必要です。ピルを服用して生理周期をずらしたい人は、早めに病院で相談しましょう。
【記事監修医】
西山紘子先生
社会福祉法人 恩賜財団済生会支部東京都済生会
東京都済生会中央病院/産婦人科医