正常な生理周期について知りたい
生理周期とは、生理が始まった日から次の生理が始まる前日までの日数です。生理は必ずしも毎月1回あるというわけではありません。女性の体型にそれぞれ個性があるのと同じように、生理周期も人によってさまざまです。
医学的にいえば、生理周期が25~38日の周期の場合は正常範囲内です。人によっては生理周期がかなり短く、24日以内という人も。反対に、生理周期が39日以上と長くなっている人もいます。生理周期は正常の範囲より短すぎても長すぎてもカラダに何らかの異常がある可能性があり、注意が必要です。
もっとも、人間のカラダは機械ではないので、この生理周期はときどきズレることがあります。2、3日前後することはよくあることで、疲れやストレス、睡眠不足などが原因で1週間ズレることも珍しくありません。
自分の生理周期について知るには、カレンダーなどを利用して生理の初日から次の生理の前日までの日数をカウントする方法があります。正確な生理周期を把握するために、数回分のデータを取って平均値を出すと良いでしょう。
生理周期が長い原因
生理周期が39日以上となり、生理がたまにしかこない状態が「稀発月経」です。稀発月経には排卵が行われているタイプと無排卵のタイプがあります。たとえ排卵が行われていても排卵までに時間がかかるため、どちらのケースも排卵がスムーズにできていない状態です。
生理周期が長い理由はいくつかあげられます。稀発月経を引き起こす原因の1つは、ホルモンバランスの乱れです。男性ホルモンが優位になっていたり、プロラクチンというホルモンが多く分泌されているなど、ホルモンがアンバランスな状態になっていると、正常な排卵ができないことがあるのです。精神的ストレスや睡眠不足などが原因で、ホルモンバランスが乱れてしまうことも少なくありません。生理不順を改善するには、日頃のライフスタイルを見直すことも大切です。
また、卵巣や脳下垂体の機能が低下している可能性もあります。排卵は脳下垂体から分泌されるホルモンの働きで、原子卵をたくさん持つ卵巣が刺激され、卵が成長することによっておこります。でも、脳下垂体や卵巣の複雑な機能のどこかにトラブルが起きていると、排卵を促す指示がうまく伝わらず排卵そのものができません。そのため、「無排卵性稀発月経」を引き起こすことがあるのです。
稀発月経にはこのようなさまざまな原因があるので、病院で相談しましょう。
生理周期が長い!隠れている病気とは
長期間ピルなどの薬を使っていることが稀発月経の原因なら、その薬剤の服用を中止します。ストレスや睡眠不足などのライフスタイルの乱れが、ホルモン異常を引き起こしているケースもあります。その場合は、安定した生理周期を取り戻すためのセルフケアも欠かせません。
また、稀発月経には、「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)」や「高プロラクチン血症」という病気が隠れていることがあります。
多嚢胞性卵巣症候群
多嚢胞性卵巣症候群は、卵巣内にたくさんの小卵胞ができ、卵胞の発育に時間がかかるため排卵できないという症状です。アンドロゲンと呼ばれる男性ホルモンの分泌量が多すぎるために、卵胞の成長に障害が出てしまうことも少なくありません。
多嚢胞性卵巣症候群に用いられる治療法は、ホルモン剤の投与や漢方薬の服用などです。こうした薬剤を使ってホルモンの分泌を正常な状態に戻す働きかけが行われます。また、妊娠を希望している場合に使われるのが、内服薬や注射剤などの排卵誘発剤です。そのほかにも、腹腔鏡手術で卵巣に小さな穴をあける外科的手術などの方法があります。
高プロラクチン血症
また、稀発月経の背景には、高プロラクチン血症という疾患が潜んでいる場合もあります。プロラクチンとは産後に母乳を出したり、生理を抑えたりするホルモンのことです。高プロラクチン血症になると、産後でなくてもこのホルモンが多く分泌されてしまいます。
治療法は原因によってさまざまなので、まずはプロラクチンが増えている原因を見極めなくてはなりません。原因の1つに、ホルモンを分泌させる脳下垂体に腫瘍ができているケースがあります。軽度であればプロラクチンの分泌をセーブする薬による治療が行われますが、時には腫瘍を切除する手術が必要です。
長い生理周期を安定させたい!対策方法とは
稀発月経などの生理不順を改善するには、専門の医療機関できちんと診察を受けることが大前提です。でも、安定した生理周期を取り戻すために、自分自身が日頃の生活で実践できるポイントもあります。女性のカラダはとてもデリケートなので、生活習慣が乱れると生理周期にも影響が及びやすいものです。まずは規則正しい生活習慣を意識しましょう。
バランスの良い食事
まずは、バランスの取れた食生活を送ることです。極端なダイエットをして生理がストップしたという話を聞いたことがあるのではないでしょうか。食事を抜いたり、ある食材だけを食べたり食べなかったりする過激なダイエットは栄養不足を招きます。栄養失調気味になるとカラダを守るために生理をストップする機能が働き、生理不順になってしまうことがあるのです。
質の良い睡眠
体内のホルモンバランスを整えるためには、質の良い睡眠をたっぷり取ることも大切です。睡眠不足になると、体内時計を調整するメラトニンの分泌が少なくなってしまいます。また、睡眠を取っていても昼夜逆転の生活を送っていると、子宮の活動をコントロールするホルモンの分泌に影響が出るので注意が必要です。きちんとした時間に就寝することでメラトニンの分泌を促して体内時計のリズムを整え、規則的な排卵を促しましょう。
冷え対策
適度な運動によって、生理不順の原因となる冷えを解消するのもポイントです。冷えは血行不良を促進させ、生理不順につながります。過激な運動ではなく、無理なくできる運動を取り入れてカラダを健康な状態に保ちましょう。
ストレス解消
ストレスも女性のカラダにダイレクトに影響を与えます。ショックなことが起きたり、緊張したりすると女性ホルモンをコントロールする脳の視床下部が影響を受け、ホルモンの分泌をやめてしまうことがあります。特に、強いストレスを感じたり、過労が続いたりするとホルモンバランスが乱れやすくなります。生理周期が乱れやすくなるので、できるだけリラックスする時間を持つなどストレスをためない工夫をするのが鍵となります。
生理周期が長い…病院に相談してみましょう
生理周期が通常より長い状態で、忘れたころに生理がやってくると不安に感じるものですよね。日頃の生活習慣を整えることで生理周期を元に戻す努力も必要ですが、生理周期が39日以上となる稀発月経の場合には何かの病気が隠れているケースがあります。
また、将来不妊などの問題を抱える可能性もあります。専門的知識を持つ医師に相談して原因を見極め、適切な治療を受けることが欠かせません。生理周期を整えて妊娠をしたい人は、自己判断して放っておくのではなく、早めに婦人科の診察を受けましょう。
【記事監修医】
西山紘子先生
社会福祉法人 恩賜財団済生会支部東京都済生会
東京都済生会中央病院/産婦人科医