生理とおならの関係
生理は子宮、おならは腸に関係するので、原因が違うのでは?と思うかもしれませんが、実は無関係ではありません。
女性は生理周期により女性ホルモンの分泌が変化します。妊娠に向けて排卵がおこると、それにともない黄体ホルモンの分泌が増えます。黄体ホルモンの作用により、女性のカラダは妊娠に備えて受精卵が子宮内に着床しやすいように子宮内膜をやわらかくし、水分や栄養をカラダにたくわえます。
一方で、黄体ホルモンは大腸の蠕動[ぜんどう]運動を低下させる働きもあるため、便が腸内に停滞しやすくなります。また、黄体ホルモンには水分を体内に取り込もうとする作用もあるので、生理前は便が硬くなり便秘に傾きがちです。
お腹にたまったガスは、排便のときに一緒に出ていくものですが、便秘になるとガスは出ていく機会を失ってしまいます。すると、ガスはおならとして小分けにでることがあります。つまり、生理前は黄体ホルモンの影響で普段よりおならが出やすいわけです。
そして、妊娠がおこらず生理がくると、黄体ホルモンの分泌は低下します。大腸の蠕動が元に戻り、便秘が解消されて、便とおならが一緒に出るようになります。
生理が近づくとおならの臭いが強くなる?
おならが臭くなる原因は腸内環境が関係しています。腸の中にはさまざまな腸内細菌が存在しますが、善玉菌、悪玉菌、日和見菌[ひよりみきん]と、大きく3つにわけることができます。
名前の通り、善玉菌はカラダに良い影響を、悪玉菌は悪い影響を与えます。日和見菌は健康なときには目立った働きをしませんが、体調が悪かったり免疫力が低下したりすると悪さをします。
腸内の環境が良いのは、善玉菌が多い状態です。ビフィズス菌や乳酸菌が善玉菌の代表で、それらの菌が少なくなり、悪玉菌が増えると、おならが臭くなります。悪玉菌はアンモニアやスカトールという有害ガスを発するため、おならが臭くなるのです。
生理前のおならの臭いの原因は、黄体ホルモンの影響により腸の働きが低下し、便が腸内にとどまって腐敗がすすみ悪玉菌が増加するためです。
生理前に実践したいおなら対策!
まずは、おならそのものの量を減らすことと、おならがたまらないようにすることがポイントです。おならをためないためには便秘を予防して、便と一緒におならを体外に出さなければいけません。
おならの量を減らすためには
空気が腸内に入り込まないように、日ごろからよく噛んで食べましょう。早食いをしたり、一気に食べたりすると、一緒に空気も飲み込みがちです。また、炭酸飲料はゲップやおならの原因になるので、おならが気になる場合は控えたほうがよいでしょう。
便秘を予防するためには
便と一緒におならを外へ出すために便秘予防は欠かせません。そのためには食生活と運動が大切です。
- 食生活
生理前には黄体ホルモンの働きで食欲が増加しやすくなります。意識的に野菜をたくさん食べ、水分も適度に摂取して便が硬くならないように気をつけましょう。
- 運動
ウォーキングを習慣にしたり、エレベーターやエスカレーターでなく階段を利用したりするだけでも十分です。生理前や生理中は外出する気分になれない人も軽くカラダを動かしましょう。
知っておきたいおならの臭い対策
臭いおならを改善するには、腸内環境を良くすること、つまり腸内の善玉菌を増やすことです。次のようなことに気をつけましょう。
食べ物で腸内環境を良くする
乳酸菌を含むヨーグルトや、発酵食品である納豆などは善玉菌を増やすことで知られています。また、腸内環境を良くしたければ、便秘は大敵です。野菜を積極的に摂取すること、適度に運動をすることは便秘対策には欠かせません。
ストレスをためこまない
大きなストレスがかかったときに、下痢や便秘をした経験はありませんか?ストレスが上手に発散できていないと、自律神経のバランスが崩れてしまい、腸内環境が悪くなることがあります。自分なりのストレス解消法をもち、ストレスをためこまないように注意してください。
おならが臭くなる食べ物に注意
バランスの良い食事は大切ですが、肉類をとり過ぎると、おならが臭くなる傾向があります。高たんぱく・高脂質の食べ物は消化しにくく、腸内環境が乱れる原因にもなるので、食べすぎには気をつけましょう。
また、ニンニクやニラなどもおならが臭くなりやすいといわれていますから香味野菜は控えるのが無難です。
おならがたまってお腹が痛いときは
おならがたまって不快に感じるときには、次のようなことを試してみてください。セルフケアでも効果がないときには医療機関で相談しましょう。原因が他にあることも考えられますし、薬の力をかりることで楽になることもあります。
お腹のマッサージ
便の通り道である大腸は、下腹部右下から上にあがり、左側へ向かって、下に降りていくように肛門へとつながっています。その大腸の通り道を意識しながら、「の」の字を書くようにマッサージをして、腸の働きを刺激しましょう。便やおならが出やすくなります。
腹式呼吸をする
カラダを仰向けにして横になり、お腹の膨らみを意識しながら鼻から息を大きく吸って、ゆっくりと口から吐き出すようします。このとき、胸でなくお腹を膨らませるようにするのがポイント。腹式呼吸はリラックス効果があり副交感神経が優位になるので、腸の働きを活発化させることにつながります。
日々の工夫でおなら対策をしよう
女性のカラダに影響を与える女性ホルモンは、妊娠に向けて排卵や生理をコントロールしています。女性ホルモンの分泌を増やして妊娠の準備をするため、どうしても生理前になると、おならが増えたり、臭いが強くなったりします。
自分でできる対策方法は、日頃から腸内環境を乱さない生活を心がけることが大切です。野菜を意識したバランスの良い食生活、適度な運動、ストレスをためない生活で、普段から腸内環境を整えるようにしましょう。
【記事監修医】
西山紘子先生
社会福祉法人 恩賜財団済生会支部東京都済生会
東京都済生会中央病院/産婦人科医