女性に頭痛持ちが多いわけ
頭痛に悩まされている日本人は多く、男性よりも女性の方が頭痛持ちが多いといわれています。その理由は、具体的にはまだ解明されていませんが、ズキズキと強く痛む「片頭痛」は、女性ホルモンが関与している可能性が高いと考えられています。
一方、頭を締めつけるような痛みがおこる「緊張型頭痛」は、働き盛りの世代に多い傾向があるものの幅広い年代・性別にみられ、精神的なストレスや首や肩の筋肉疲労が関与しているといわれています。
まずは自身の頭痛が「片頭痛」「緊張型頭痛」のどちらなのかを確認し、それぞれの原因と適切な対処法をチェックしましょう。
あなたはどっち?片頭痛と緊張型頭痛
頭痛には、代表的なものとして片頭痛と緊張型頭痛の2種類があります。それぞれなにが原因か、どんなときに痛みがおこるのかをみていきましょう。
片頭痛
片頭痛は、片側あるいは両側のこめかみあたりが、脈にあわせてズキズキと痛むのが特徴です。前兆がないタイプとあるタイプがあります。
- 前兆がない片頭痛
頭の片側や両側に脈打つような比較的強い頭痛がおこります。カラダを動かすと痛みを感じ、悪心[おしん]や、光・音に対して過敏になるといった症状があらわれます。
- 前兆がある片頭痛
頭痛がおこる前に目がチカチカするような前触れがあります。その後、前兆がない片頭痛と同様に、頭の片側か両側に脈にあわせて強い頭痛がおこります。
片頭痛の特徴といえる、脈打つような痛みは、頭部の血管拡張により神経が刺激されることによります。片頭痛だけではなく、風邪や二日酔いによる頭痛も頭部の血管拡張が原因です。
緊張型頭痛
緊張型頭痛の場合は、頭の左右両方におこることが多いです。痛みはそこまで強くなく、圧迫感のある締めつけられるような痛みが短時間~数日間きます。
片頭痛と異なり、カラダを動かしても痛みが悪化することはありません。緊張型頭痛は、首や肩の筋肉の緊張によるコリにより引きおこされます。デスクワークなどで長時間同じ姿勢を続けたり、目を酷使したりしたときにおこる頭痛は、緊張型頭痛の可能性が高いです。
また、精神的なストレスにより首や肩の筋肉がこわばると、緊張型頭痛がおこります。男性よりも女性の頭痛持ちが多いことから、一説では女性の方がストレスを感じやすいのではないかともいわれています。
原因は女性ホルモン?生理前後に頭痛がおこるメカニズム
男性よりも女性に頭痛持ちが多い理由ははっきりとはわかっていませんが、少なからず女性ホルモンが関係していると考えられています。それは、生理前のホルモンバランスが大きく変動するタイミングで頭痛がするという女性が多いためです。
女性ホルモンのひとつである卵胞ホルモンの分泌が減ると、脳内のセロトニンが減少します。セロトニンは血管収縮のコントロールや痛みの抑制作用を持つ物質であるため、セロトニンが減ると痛みに過敏な状態になり、頭痛がおこりやすくなると考えられています。
さらに、初潮がある10代以降で女性の頭痛持ちの割合が増え、卵胞ホルモンの分泌が低下する生理中や排卵期、ピルの休薬時、分娩後に症状が悪化します。また、卵胞ホルモンの分泌量が多い状態が続く妊娠中期以降には、片頭痛の症状が軽くなる傾向がみられます。加えて、卵胞ホルモンの変動が大きくなる更年期も片頭痛が悪化しやすい時期です。
閉経により生理がなくなって女性ホルモンの分泌量自体が減少すると、片頭痛が改善する人も多く、閉経後にホルモン補充療法をおこなうと片頭痛が悪化するケースもあります。
一方、緊張型頭痛は閉経を迎えても、改善傾向はみられないことがほとんど。これらのことから、卵胞ホルモンが片頭痛に関与している可能性が高いと考えられています。
知っておくと安心!辛い頭痛のセルフケア
頭痛のセルフケアとして、市販の鎮痛薬を服用することもひとつの方法です。ただし、鎮痛薬は痛みの原因物質を抑える作用を持つものであるため、痛みがガマンできないほどひどくなってから服用しても十分な効果は期待できません。鎮痛薬を服用する場合は、痛みが始まったタイミングで服用するようにしましょう。
もし、日常生活に支障が出るほど痛みが強かったり、これまで効いていた市販薬が効かなくなったりした場合は、何らかの病気が原因となっている可能性もあるため、早めに病院へ行きましょう。
次に頭痛のタイプ別に、痛みをやわらげる方法を紹介しますので、頭痛に悩まされている人は参考にしてみてください。
片頭痛の対処法
片頭痛が引きおこされる原因は、強い光や大きな音、特定の食べ物など、人によって異なります。
片頭痛の原因には、睡眠不足や血糖値の低下などが考えられるため、睡眠時間は最低でも6時間は確保しましょう。また、8時間以上寝すぎてしまうと片頭痛を誘引する可能性があるため、週末に夜更かしして寝だめするような生活は逆効果です。
片頭痛は、光や音、カラダを動かすことで痛みが悪化します。そのため、片頭痛がしたらできるだけ暗く静かな部屋で、安静に過ごすのが大切です。血管の拡張を抑えるため、額やこめかみ、首筋などの血管を冷却シートや冷たいタオルで冷やすのも効果的。
緊張型頭痛の場合と異なり、片頭痛時に運動すると血流が良くなって痛みが悪化しますので注意しましょう。同様に、入浴もカラダが温まって血流が良くなるため痛みの悪化をまねきます。片頭痛がある時は、これらのことはおこなわないように気をつけましょう。
緊張型頭痛の対処法
緊張型頭痛の場合は、精神的なストレスや、首や肩の筋肉の緊張が原因なので、首や肩まわりのマッサージやツボ押し、簡単な体操やストレッチで筋肉の緊張をほぐし、血行を促すのが効果的です。長時間デスクワークをしている人は、定期的に休憩して軽くカラダを動かすだけでも頭痛が軽減されることもあります。
頭痛の予防・対策は痛みの原因を知ることから
生理と頭痛には関連性がありますが、すべての頭痛が生理によりもたらされるわけではありません。生理前後の頭痛はホルモンバランスの変化にともなう片頭痛の可能性が高いです。生理中に頭痛がしたらここで紹介した片頭痛のセルフケアを試してみてください。規則正しい生活をして寝不足を予防し、3食しっかりと食べるようにしましょう。
ただし、日常生活に支障を生じるほど頭痛がする場合は、病気が原因となっている可能性があります。くも膜下出血や脳梗塞などが原因の場合、一刻も早く適切な治療をする必要があります。普段と違う痛みを感じた場合は、早めに病院で診察を受けましょう。
【記事監修医】
西山紘子先生
社会福祉法人 恩賜財団済生会支部東京都済生会
東京都済生会中央病院/産婦人科医