子宮外妊娠の可能性
子宮外妊娠とは、子宮以外のところで妊娠をしてしまうことをいいます。
卵子と精子が出会って受精が成功すると、妊娠が成立します。妊娠すると、受精卵は分裂を繰り返しながら、子宮内腔に向かっていきます。子宮の内膜は妊娠しても大丈夫なように内膜をフカフカの布団のようにして準備をしているのです。そこに受精卵が定着することを「着床」といい、それから受精卵は成長を繰り返し、赤ちゃんになります。
通常、着床は子宮の内膜でおこりますが、子宮内ではなく、別の場所に着床してしまうことがあります。それが子宮外妊娠です。子宮外妊娠のほとんどは受精卵が子宮へ向かう通り道である卵管でおこり、卵管妊娠とよばれています。子宮外妊娠になると、出血や痛みを感じることが多いといわれていますが、必ずしも症状があるとも限りません。放っておくと、自然に流産になることもありますが、なかには卵管が破裂してしまい大量出血することもあります。
すなわち、子宮外妊娠をおこしても不正出血がないこともあれば、少量の不正出血があることも。出血量が多い場合には、すぐにでも受診をする必要があります。
子宮外妊娠と診断された場合は、妊娠を維持することは困難です。状況によっては、卵管を残すことが可能なこともありますが、手術によって卵管ごと摘出することもあります。
初期流産の可能性
妊娠中に不正出血がある場合、気になるのは流産ではないでしょうか。12週未満でおこる流産を「初期流産」といいますが、決してまれではありません。
初期流産には不正出血や痛みをともなうことが多いといわれていますが、出血量や痛みには個人差があります。ごく初期のうちは痛みを感じないことも。6~7週間を過ぎると、多くの場合で痛みを感じるといわれますが、妊娠したことにまだ気がついていない女性もいて、生理痛による痛みと勘違いすることもあります。
初期流産では出血がまったくないこともあり、何らかの異常で成長できなかった受精卵が子宮内に残っている状態で、超音波エコーによって確認されることがほとんどです。その場合には、内容物を除去するための処置が必要になってきます。
妊娠初期に不正出血がみられたら受診し、胎児の心拍を確認しましょう。妊娠初期の不正出血の多くは心配ないといわれますが、妊娠初期に流産がおこりやすいこともまた事実です。
流産の原因のほとんどは胎児側にあるといわれています。したがって「あのときに何をしたから…」または「何かをしなかったから…」ということではありません。受精をした時点ですでに決まっていることで、予防することは非常に難しいわけです。受精卵が正常であれば、多少の出血があっても問題なく成長することがほとんどなので、必要以上に不安にならないことも大切です。
妊娠の着床出血とは?
妊娠初期にみられる不正出血に、着床するときに出血する「着床出血」があります。生理様出血(月経様出血)とも呼ばれますが、原因は主に2つ考えられています。考えられる原因によって、不正出血の時期や症状が異なることが特徴です。
1つ目は、子宮内に着床する際に血管を傷つけてしまうことでおこる着床出血で、必ずしも出血するとは限りません。出血量については生理よりも明らかに少なく、おりものに色がついた程度です。着床するときにおこる出血ですから、多くは排卵日から1週間が経過したころ(次の生理予定日の1週間前あたり)に不正出血がみられます。2~3日出血が続くことが多く、生理のように一週間も続くことはありません。
2つ目は、ホルモンの異常が原因といわれています。通常、妊娠をすると絨毛性ゴナドトロピン(hCG)というホルモンが分泌されるのですが、その分泌量が少ない場合、カラダが妊娠だと認識しません。すると、本来なら分泌を維持するはずの黄体ホルモンの分泌量が低下し、生理と似たような出血がおきることがあります。不正出血のおこる時期も、生理の予定日ころに重なることが多いでしょう。
また、出血量は生理のときと同じぐらい出血することが多く、ときには一週間以上も続くことがあります。生理との区別が難しく、不正出血と気がつかないこともあります。
どちらにしても、異常ではないので大きな心配はありませんが、自己判断をするのは危険です。きちんと診察を受けて確認しましょう。
絨毛膜下血腫とは?
絨毛膜下血腫とは胎盤形成時につくられることのある血のかたまりのことです。受精卵が無事に着床すると、次は受精卵から絨毛という組織が伸びてきて、胎盤を形成し始めます。胎盤とはお腹のなかの赤ちゃんがお母さんから栄養や酸素を受け取るために必要な器官。その胎盤を形成する際に、絨毛がお母さんの子宮膜の血管を破り、傷つけることで出血することがあります。その出血が止まらずに血腫(血のかたまり)をつくることを、絨毛膜下血腫といいます。
出血量は、血腫のできる位置によって異なり、子宮口に近い位置に血腫ができた場合、比較的に出血量が増える傾向にあるといわれています。胎盤を形成する妊娠初期におこりますが、妊娠中期までに自然に治ることがほとんどです。したがって、出血量が多くない限りは経過観察をすることが多いですが、出血がおさまるまでは安静が必要となります。
妊娠による不正出血の対処法は?
妊娠初期に不正出血がある場合、一番気になるのが流産の可能性です。すぐにでも受診するべきか、安静にしておけばいいものか迷うかもしれません。
病院へ行くかどうかのポイントは出血量です。出血量が多いときや出血が止まらないとき、腹痛などの痛みもあるときには、すぐに診察を受けましょう。出血量の大まかな目安として、生理2日目よりも出血が少ないときには、落ち着いてからの受診で問題ないでしょう。不安な場合には電話で確認してみてもいいですね。そのためにも、妊娠の可能性がでてきたら、できるだけ早くに産婦人科で診察を受けることが大切です。
妊娠初期にはさまざまな理由で不正出血がおこりますが、大事なことは赤ちゃんが問題なく成長しているかどうかです。妊娠に気がついたら、まず産婦人科で診察を受けてください。
妊娠初期の不正出血は落ち着いて対応しましょう
妊娠初期に出血があれば、流産を想像して焦ったり、不安になったりするかもしれません。 しかし、妊娠初期の不正出血は決して珍しいことではないのです。不正出血があったからといって、必ずしも胎児や母体に異常があるわけではありません。
まずは、落ち着いて不正出血の量や症状を観察しましょう。生理2日目を目安に、それよりも出血量が多い場合や出血が止まらない場合には医師に相談を。出血量が少なくても不安が残るのであれば、かかりつけの病院で相談してみましょう。
【記事監修医】
西山紘子先生
社会福祉法人 恩賜財団済生会支部東京都済生会
東京都済生会中央病院/産婦人科医