相手にどう伝えるか、どう寄り添うかが重要――子どもを授かった先輩夫婦に聞く、ふたり妊活の本音と実践法
当たり前のように自然妊娠ができると思っていたけれど…
妻・美咲さん:妊活を始めたのは26才のころ。最初はおうちでのタイミング法で妊娠を目指していたんです。自分たちも当たり前のように自然妊娠ができると思っていました。でも、なかなか授からなくて。
人間ドックで子宮頚部[けいぶ]異形成(子宮の入り口である頚部に、正常とは異なる細胞の形が見られる状態)を指摘されていたこともあり、おうちでのタイミング法を3~4ヵ月続けて結果が出なかった時点で「これは病院にかかって本格的な妊活をしなくてはいけないのかも」と焦り始めました。それから、不妊治療をおこなっていて女医さんが診察してくれる近所のレディースクリニックに通うことにしました。
夫・陽太さん:妻がレディースクリニックに通い始めたころは、これからどうしていけばいいのか、まったくわからなかったことを覚えています。正直、僕は妊娠の仕組みさえあやふやな状態だったので。妻から不妊治療に関する情報を共有してもらい、一緒に知識を深めていきました。今となっては、情報収集は自分も積極的におこなうべきだったなと反省しています。
妻・美咲さん:女性にとって妊娠は自分のカラダに直接起きる変化。そうなると、妻から夫に情報を共有するシーンはどうしても多くなってしまうと思います。でも、私にとっても不妊治療は初めてのことだから、どれが正しい知識なのか判断するのが難しかったですね。
病院へ通いつつ知識を増やしていこうと決めて、わからないことはWebの記事や本を読み込み、学んでいきました。今振り返ると、最初から信頼できる病院の説明会へ参加して医師から正しい知識を得ればよかったのかもしれません。当時はほとんど手探りでした。
彼に記事を共有するだけだと「読んだかな? 本当に理解できたかな?」という不安があったので、一緒に見ながら説明するようにしていました。
夫・陽太さん:僕も、教えてもらった内容でわからないところは個人的に調べたり、病院からもらった不妊治療に関する冊子を読んだりして勉強しました。平日の仕事が終わってから、夜にふたりで話し込む日もありましたね。不妊治療を始めてからは、「次の診察日までにどういう判断をするか」をふたりでよく話し合いました。
妻・美咲さん:つらいときは不妊治療の体験をした人の話を読んで、「同じ立場の人が妊娠している」と希望にしたりして。医学的なことは頭で理解できても、心が追いつかない部分があると感じていましたね。
仲が良くても、同じ気持ちになるには時間がかかった
妻・美咲さん:不妊治療を始めてから、原因を調べるために病院でいろいろな検査を受けました。
例えば、卵管造影検査(精子の通り道である卵管の状態を、X線透視で調べる検査)や、腹腔鏡検査(子宮の状態を見るためにへその下を少し切って内視鏡を入れる検査)を受けました。後者を受けたときは、片方の卵管の詰まりを取り除いてもらいました。
私にも彼にも具体的な原因は見当たらなかったのですが、それでも妊娠できなくて。原因がわからないことへの不安がすごく大きくて、毎月の生理がくる度に深く落ち込んでいました。正直、「なんで私ばっかり!」という気持ちになる日もありました。
夫・陽太さん:本音を言うと、始めは「なぜそんなにしょげているんだろう」と思ってしまうこともありました。でも、半年くらい病院へ通って、生理がくるたびに泣く彼女の姿を見て、「これはただごとじゃないぞ」とやっと気が付きました。
妻・美咲さん:私たちはどんなことでも話せる仲で、自分の気持ちも伝えてはいたのですが…。ちゃんとわかってもらうのには、時間がかかりましたね。
夫・陽太さん:目の前で泣いて悲しむ姿に、どうメンタルケアをすればいいのか悩んで。友人に不妊治療を経験した人がいたので、妻をどうフォローするべきか相談していました。不妊治療の体験をした人のWeb記事も参考になるけれど、近くの人の話はもっと実感を持って聞ける。不妊治療を経験している方って、意外と身近にいるんですよね。みんな親身になって相談に乗ってくれました。
妻・美咲さん:不妊治療を始めると、病院へ通う回数が増えます。また、カラダの状態を見て「明日、排卵するかもしれないからまた病院に来てね」と言われるようなこともあって、事前にスケジュールを組めるわけではないんです。幸い、私の職場は不妊治療への理解が進んでいたこともあり、救われました。その環境じゃなかったら、「不妊治療のために遅刻する・休む」と切り出しにくい。仕事と不妊治療の両立は難しかったかもしれません。
タイミング法を続けて8ヵ月。夫の提案で休憩時間を設けることに
妻・美咲さん:そうやって検査をしつつ病院でのタイミング法に取り組みましたが、8ヵ月続けても結果が出なくて。夫の提案で、不妊治療を一度お休みすることにしました。当時は仕事と不妊治療を両立していたのですが、仕事も退職して。
夫・陽太さん:「子どものことは気にしないで、ふたりの時間を楽しもう」と。おうちでのタイミング法をおこないつつ、1年という期間を決めて妻の通院をお休みすることにしました。妻は当時、生理がくるたびにひどく落ち込んでいたし、子どもを見るのでさえつらい状況でした。だから、僕は仕事を続けつつ、彼女にはのんびり過ごしてもらおうと思ったんです。
「もしかすると、子どもを授かれないかもしれない。だったら、ふたりで楽しめる何かがあった方がいいね」と。生理がきてしまったら、あえて子どもが一緒だと入店できないレストランや宿へ出かけて、楽しむ時間を取るようにしました。
妻・美咲さん:そんな風に過ごすうちに、「もし子どもができなくても、ふたりで楽しく生活していける」という未来が見えました。子どもができない自分を責めることもあるけど、夫が気遣ってくれたことで、かなり救われましたね。
ふたりで治療の方法を考え、体外受精に挑戦
妻・美咲さん:そうやって1年間自分たちでおうちでのタイミング法を続けていると、「もし子どもを授かれなくても、私たちは大丈夫」とメンタルがかなり落ち着いてきました。そうしたら、もう一度不妊治療を再開しようと思えたんです。
それで、前の職場で不妊治療を経験した方から教えてもらったクリニックを新たに受診することに決めました。
タイミング法で結果が出なかった場合は、「人工授精」を経て「体外受精」に進むのが一般的ですが、私たちは医師に相談して、「人工授精」はスキップし「体外受精」からトライすることに。
「人工授精」は採取した精液を人工的に子宮内へ送り込み、精子が卵子に到達する距離をショートカットするもの。精液検査で夫の精子の運動率などに問題がなかったので、「人工授精」をしてもあまり成果が出ないのではと考えてのことです。
夫・陽太さん:クリニックの「体外受精」に関する説明会にはふたりで参加し、それ以降は妻ひとりで受診してくれました。
妻・美咲さん:「体外受精」では、採卵(卵子を体外に取り出すこと)し、精液を振りかけて受精を目指します。私たちが通ったクリニックは、麻酔なし・日帰りで採卵ができるところで、気軽に通えるところがいいなと思いました。
「体外受精」を始めたころは28~29才くらいだったのですが、病院の先生は「年齢的にもきっと大丈夫」と励ましてくれて、追い詰められた雰囲気はありませんでしたね。だから、一旦期間や回数は決めずに、「まずはやってみよう」と肩の力を抜いて始めました。すると、3ヵ月目、3回目のトライで妊娠することができました。
ふたりの温度差はどうしても生まれる。大切なのは相手を「わかろうとする姿勢」
妻・美咲さん:今振り返ってみると、不妊治療中は「妊娠できない自分」を責めすぎていたなと思います。夫からどれだけやさしい言葉をかけられても、「このつらさ、あなたにはわからないでしょ」という気持ちが根底にあって、彼の好意を拒否してしまうこともありました。
夫・陽太さん:心に寄り添うことはずっと意識していました。ただ、不妊治療の知識については、もっと僕自身が積極的に学んでいくべきでした。どうしても、病院に通っている彼女から医師の話を伝え聞くシーンが多かったので…。
妻・美咲さん:でも男性が先に知識を身につけて、「こう書いてあるからこうすれば」と助言されても、「口で言うのは簡単だけどさ…」と女性は困ってしまうかもしれません。
女性にとっては自分のカラダにダイレクトに関係することだから、自分が納得していないと前に進めないと思うんです。だから、ふたりで足並みを揃え、同じだけ知識を身につけて、相手にあったケアをするのがいいかもしれないですね。
夫・陽太さん:僕の行動で、よかったところはあった?
妻・美咲さん:ふたりの時間を作ってくれたこと。子どもを見るのさえつらい時期に、おとなだけで行けるレストランや宿を探してくれたのは本当にうれしかった。解決策を一緒に考えようとしてくれる姿勢から、「ふたりで妊活をしているんだ」という気持ちになれたよ。
夫・陽太さん:本当にいろんなところに行ったよね。不妊治療はつらいこともあったけど、楽しい思い出もたくさんある。相手の気持ちを100%理解するのは難しいけれど、気持ちに寄り添う姿勢を見せるのは大事なことだな、と。
妻・美咲さん:不妊治療に対するふたりの温度差は、埋めるのがどうしても難しい。私たちは激しい喧嘩にはならなかったけど、イライラして悲しくて…。時間をかけて彼に知識を伝えたからこそ、一緒に進むことができたのかなと思います。
第一子の不妊治療はトータルで3年くらいかかりました。でも、第二子は自然妊娠で授かったんです。あれだけ不妊治療をやったので、「子どもってそんなに簡単にできない」という意識が強かったのですが、「人によっては一度出産を体験すると、妊娠のしやすさが変わる場合もある」とお医者さんに聞きました。びっくりしたし、嬉しかったですね。
「ふたりの人生を楽しもう」という前向きな姿勢が、絆を深めた
鈴木さんご夫婦は、不妊治療を開始したときから「子どもができなくても、ふたりの人生を楽しもう」と決めていたそう。印象的だったのは、陽太さんが、美咲さんを気遣うことを忘れずに、メンタルケアをしようと寄り添った姿です。
不妊治療の結果がどうなっても、どれだけ相手を思いやり行動するか。それが、その後ふたりの人生を歩んでいく上で、大切になっていくのかもしれません。
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【記事監修】
株式会社ファミワン
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