妊活の知識

妊娠するとカラダの調子はどう変わる?「体調(婦人科)」編

「妊娠したら体調はどうなるんだろう? 想像できなくて不安……」「つわりってどんなもの?」「妊婦がかかりやすい病気って?」

妊娠を望む人のなかには、体調の変化が気になるという人もいるでしょう。妊娠すると、女性のカラダは大きく変わります。どんな変化があってどう対処すればいいのか、妊娠する前からふたりで学び、準備をしておくことが大切です。

妊娠前に知っておきたい、妊娠後の体調の変化

妊娠後の体調の変化には、時期によって表れるものと、妊娠期間全体を通しておこりやすいものがあります。まずは、妊娠初期・中期・後期に特徴的な体調の変化を紹介します。

妊娠初期

妊娠初期とは、妊娠2~4ヵ月(4~15週)のこと。妊娠週数は直近の生理が始まった日から0週0日と数え始めるので、受精のタイミングは排卵と同時期の2週、着床して妊娠が成立するのが3週です。生理の遅れや妊娠の初期症状から妊娠に気づくのは、早くても4週以降になります。

妊娠2ヵ月(4~7週)

妊娠3ヵ月(8~11週)

妊娠4ヵ月(12~15週)

妊娠中期

妊娠5〜7ヵ月(16〜27週)の妊娠中期は体調が比較的落ち着いているため、安定期と呼ばれることも。とはいえ、後期に向けて少しずつ体調トラブルが増えていく時期でもあります。

妊娠5ヵ月(16~19週)

妊娠6ヵ月(20~23週)

妊娠7ヵ月(24~27週)

妊娠後期

臨月を含む妊娠8~10ヵ月(28~39週)は妊娠後期と呼ばれ、むくみや便秘、腰痛、息切れなど、様々な体調トラブルに悩まされる時期です。お腹も張りやすくなるため、なにかあったらすぐ産院に連絡できるよう準備してくださいね。

妊娠8ヵ月(28~31週)

妊娠9ヵ月(32~35週)

妊娠10ヵ月(36~39週)

妊娠中によくある体調の変化

ここからは、妊娠中におこる体調の変化と悩みについて、より詳しく解説します。

つわり

つわりがおこりやすいのは妊娠4~15週ごろ。症状は人によって様々ですが、その中でも代表的なものを紹介します。

ピークは妊娠8~9週ごろと言われており、早めに終わる人や長く続く人、まったくない人など、時期にも程度にも個人差が大きいのも特徴です。

病的に重いつわりである「妊娠悪阻」の場合は治療が必要です。水も飲めないような状態が続くときは、ガマンせずすぐに受診してくださいね。

対策

吐き気であまり食べられないこともありますが、妊娠初期の赤ちゃんは非常に小さいため、栄養のことは心配しすぎないで。この時期の食事は「食べられるものを食べられるだけ」で大丈夫です。脱水症状を防ぐために、水分だけは意識的にとるようにしてくださいね。

胸の張り

胸の張りは、妊娠期間の早い段階で自覚するカラダの変化です。妊娠4~5ヵ月ごろにはそれまで使っていた下着がきつく感じる人もいるでしょう。

妊娠経過が進むと乳腺がさらに発達し、カラダにも脂肪がつきやすくなるので、胸はますます大きくなります。出産直前には、妊娠前より2~3サイズアップすることも。また、乳輪部の色素沈着や黒ずみなどの変化もあります。

乳腺の発達は、出産後の授乳に向けたカラダの準備です。

といった場合は、妊娠10ヵ月ごろから乳房マッサージを行い、赤ちゃんが吸いやすいおっぱいに整えるよう産院で勧められることもあります。

対策

胸の張りを感じるようになったら、乳腺の発達を妨げないよう、ゆったりとした下着や服装に切り替えます。胸全体をやさしく支える、マタニティ用の下着がオススメです。ハーフトップや胸を露出しやすいタイプのブラジャーなら、授乳が始まっても使いやすいですよ。また、胸が大きくなると、胸の横側や下側に妊娠線ができやすくなります。保湿ケアは早めにスタートするのがオススメです。

おりものの増加

おりものとは子宮頚部[けいぶ]や子宮内膜、膣から出る分泌物のこと。子宮を菌などの外敵から守る、女性のカラダにとって重要なものです。膣内部のうるおいを保ち、汚れを体外に排出するはたらきもあります。妊娠中はエストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌が増える影響で、妊娠前よりもおりものの分泌量が増えます。

妊娠中のおりものは、

が通常です。

注意したいのは、おりものの色やニオイなどがいつもと違うとき。子宮頸管部[けいかんぶ]や膣に炎症がおこっている可能性があります。

このような状態のおりものがある場合は、病院を受診し、必ず産院にも連絡しておきましょう。

対策

量が多いこと自体は問題ありませんが、デリケートゾーンが湿った状態が続くと雑菌が繁殖してかぶれてしまうことも。下着をこまめに替えたり、おりものシートを使ったりして対処しましょう。かゆみが強い場合は、かぶれを治す塗り薬などを処方してもらえることもありますよ。

おりものの変化にすぐに気づけるよう、妊娠中は股の部分が白いショーツを履くのがオススメです。

貧血

妊娠中は血液の量が増えますが、赤血球が増えるスピードが追いつかず血液が薄くなるうえ、赤ちゃんのためにより多くの鉄分が必要になるので、貧血になりやすくなります。貧血が重くなると、出産時の出血で輸血が必要になることもあります。

対策

鉄分などの栄養素を積極的に摂ることで予防しますが、改善しない場合は鉄剤が処方されることも。

体重増加

妊娠中の体重増加には、胎児や胎盤、子宮や羊水の重さだけでなく、カラダに脂肪がつきやすくなることも関係しています。適正な体重増加は母子にとって欠かせませんが、太りすぎると妊娠中特有の病気や難産のリスクが上昇するので、注意が必要です。

対策

妊娠前のBMIから適正な増加目安を知り、適度な運動と栄養バランスのいい食事を心がけて過ごしましょう。

便秘

妊娠中は、プロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌が増えることで、腸の動きが悪くなります。また、大きくなった子宮が腸を圧迫したり、運動不足になりやすかったりすることも影響し、便秘になりやすい傾向にあります。

対策

便秘に良い食事や水分をよく取ること、適度な運動をおこなうことを意識して生活してみて。それでも便通が改善しない場合は、病院で相談してください。妊娠中も服用できる便秘薬を処方してもらえることがあります。

腸が圧迫されることで肛門付近の静脈が圧迫されて、いぼ痔になってしまったり、便秘で固くなった便を排せつするときに、肛門が裂けて切れ痔になってしまったりと、痔の症状に悩まされる妊婦さんも多くいます。カラダが冷えて血流が悪くなることも、痔になる原因の1つ。

対策

まずは便秘を解消し、カラダを冷やさない生活を心がけることで、痔を予防できます。

虫歯・歯周病

妊娠中の女性は、ホルモンの影響や免疫力の低下によって、虫歯や歯周病になりやすくなります。また、つわりで歯磨きがおろそかになることも原因の1つと言われています。

歯周病を放っておくと、病原菌から出産を誘発する物質が出て、早産(赤ちゃんが成熟する前に産まれてしまうこと)のリスクも。

対策

日々の口腔ケアはもちろん、妊娠すると歯科検診の補助券をもらえるため、必ず検診を受け、異常があれば早めに治療しておきましょう。

静脈瘤

大きくなった子宮に、静脈が圧迫されてできる「静脈瘤」。ふくらはぎなどに血管が浮き出てしまいます。

対策

血液の循環をよくなるよう、長時間同じ姿勢でいないよう心がけたり、寝るときに足を高くしたりといった工夫で予防することができます。

赤ちゃんに影響する可能性があるトラブル

カラダが大きな変化を続ける妊娠中は、赤ちゃんの発育や出産、女性のカラダにも影響する思いがけないトラブルがおこることも。落ち着いて対処できるよう、今から知っておきましょう!

赤ちゃんの発育にも関わる「妊娠高血圧症候群」

胎盤と母体の血管への負担が大きくなることで高血圧になってしまう「妊娠高血圧症候群」。血圧が高くなることで、吐き気や頭痛といった症状が現れます。

重症化すると胎盤の機能低下が起こり、赤ちゃんが発育不全になってしまうことも。母体にとっても非常に危険なので、妊娠を終了させるために帝王切開で分娩することになります。

一方、軽症であればお腹の赤ちゃんにはあまり影響しないとされている病気です。安静を心がけ規則正しい生活を送ることで、血圧をコントロールし、できるだけ妊娠期間を延ばす方法で対処します。

産院での妊婦健診では血圧測定や尿検査、体重測定を毎回行い、「妊娠高血圧症候群」になっていないかチェックします。

激しい腹痛と出血をともなう「常位胎盤早期剥離」

妊娠後期になるとお腹が張ることが増えますが、安静にすると落ち着くようであれば、問題がないことがほとんど。

一方で激しいお腹の痛みや大量の出血をともなうときは、出産前に胎盤が剥がれてしまう「常位胎盤早期剥離」かもしれません。母子ともに非常に危険な状態なので、すぐに病院を受診してください。

早産のリスクがある「切迫早産」

「切迫早産」とは、早産のリスクがある状態のこと。出血やおりものの異常、お腹の張りや痛みといった前兆があることが多いので、こうしたサインを見逃さないようにして。

「切迫早産」と診断されると、薬の処方や自宅安静、入院安静によって治療します。医師から自宅安静を告げられたときは、男性や他の家族と協力して、女性は家事などをお休みしましょう。

ふたりで知識を深めて、妊娠・出産の準備を進めよう

妊娠は、赤ちゃんを迎えるために女性の体調が大きく変わる一大イベント。妊娠前と全く同じ生活を送るのは難しくなります。

この変化の波を乗り越えられるよう、ふたりで協力しあい、お互いが同じレベルの知識を持っておくことが大切です。また、体調の変化で不安なことがあれば、医師に相談してくださいね。

【記事監修】

株式会社ファミワン 不妊症看護認定看護師 看護修士

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