妊活の知識

妊活中・妊娠中の「薬」との付き合い方

薬には、妊娠すると使えなくなるものがあります。妊娠中や妊活中にはどんな薬が服用できないのか、普段飲んでいる薬とはどう付き合えばいいのか。妊活をこれから始める人も、すでに実践中の人も、ここで確認してみましょう。

妊活中に避けるべき薬とは? サプリメントや栄養ドリンクにも注意

薬の服用には、妊娠中だけでなく妊活中も気をつける必要があります。知らずに服用してしまうことのないよう、正しい知識を身につけておきましょう。

妊娠の可能性があるなら、妊娠禁忌の薬は服用NG

妊娠禁忌の薬とは、赤ちゃんや母体へ影響を及ぼすため妊娠中の服用が禁止されている薬のこと。これらの薬は「妊娠4週から服用禁忌」と考えるのが一般的です。

妊娠の可能性がある場合には妊娠禁忌の内服は控えておいた方がよいでしょう。また、妊娠がわかってからの内服については産婦人科に必ず確認してくださいね。

具体的な妊娠禁忌の薬については、記事の後半で詳しく紹介します。

ロキソニンやボルタレンには排卵抑制効果がある

解熱鎮痛薬のロキソニンやボルタレン。薬局でも買える身近な薬で、頭痛のときによく使うという人も多いのでは? 実は、排卵期にこれらを飲むと、その周期は排卵が抑制されてしまう可能性があることがわかっています。

妊活中はずっと飲めないというわけではありませんが、排卵期周辺の服用は避けましょう。内科などを受診するときも、医師に妊活中であることを伝えてください。

サプリメントや栄養ドリンクを飲みたいときの注意点

薬と同様に、サプリメントや栄養ドリンク、エナジードリンクのなかにも妊活中は避けたほうがいいものがあります。

ビタミンAの過剰摂取は先天性異常を招くおそれも

妊娠中にビタミンAを過剰摂取すると、赤ちゃんが「水頭症(脳の病気)」や「口唇口蓋裂(産まれたときから唇や上あごなどが繋がっていない状態)」などの先天性異常をおこすリスクを高めます。

ビタミンAの必要摂取量は通常の食事で十分満たされるため、妊活中や妊娠中のビタミンAサプリメントの服用は不要です。

なお、そのほかのビタミン類のサプリメントは、妊活中や妊娠中に飲んでも問題ありません。ビタミンB群の一種である葉酸は、妊活中からサプリメントや食事で積極的に摂取したい栄養素です。

栄養ドリンク、エナジードリンクのカフェインに注意

「もうひと頑張り」したいときに頼りがちな栄養ドリンクやエナジードリンクには、アルコールやカフェインが入っているものもあります。流産のリスクを低下させるためにも、妊娠している可能性がある時期には避けたほうが安全です。

妊活中のカフェインの摂取はNGではないものの、摂りすぎは控えたほうがいいでしょう。1日に1~2杯のコーヒーを飲むのは問題ありませんが、「毎日コーヒー5~6杯分のカフェインを摂取すると、妊娠しやすさに影響が出る」というデータがあります。特にエナジードリンクにはコーヒーよりもカフェイン含有量が多いものもあるため、飲む前にカフェインの量を確認してくださいね。

持病がある人は、妊活開始前に薬について主治医と相談しておこう

持病があり、妊娠前から薬を服用している人もいるでしょう。その薬が妊娠禁忌だったり、妊娠中は量の調整が必要だったりする場合も。妊娠4~10週の器官形成期は特に薬の影響を受けやすいので、妊娠が発覚したらすぐ持病でかかっている病院に連絡し、薬について相談してください。妊娠に気付かず薬を服用してしまうことも考えられるので、できれば妊活開始前から主治医と薬について相談しておきましょう。

妊娠後に薬を服用し続けることに抵抗がある人もいるかもしれません。しかし、自己判断で中止したり、量を減らしたりするのは危険です。持病が悪化して赤ちゃんにも影響する可能性もあります。妊娠中の治療方針は、持病の診療科の主治医、産科医の両方と十分相談したうえで決めましょう。

持病がある人は総合病院での出産を勧められることも

一般的に、持病がある女性は妊娠出産のリスクが上がるとされています。総合病院ならNICU(新生児集中治療室)があり、もし出産時に赤ちゃんにトラブルがあってもすぐに治療できます。より安心して出産できるという意味でも、総合病院を選ぶメリットは大きいですよ。

妊娠禁忌の薬って? 妊娠中の、薬との正しい付き合い方とは

では、実際に妊娠したらどんな薬の服用を避けるべきなのでしょうか? ここでは、妊娠禁忌の薬の具体例とその理由について、1つひとつ確認していきましょう。

妊婦には「禁忌の薬」「できれば避けたい薬」「服用できる薬」がある

薬は、「赤ちゃんや母体へ影響を及ぼすかどうか」で3段階に分けられます。

妊娠したらすべての薬がNGというわけではありません。影響が少ないものは、症状に応じて服用できます。また、妊娠中も時期によっては使える薬や、用量や用法を調整すれば使える薬もあります。ただし、いずれの医薬品も医師に相談しながら服用を検討していきます。

「催奇形性」「胎児毒性」のある薬は妊娠禁忌

妊娠中に必ず服用を避けるべきなのは「催奇形性」「胎児毒性」の作用がある薬です。

催奇形性

神経や心臓、脳などカラダの核となる器官がつくられる妊娠4~10週ごろまでに赤ちゃんの形態異常や障害を起こす作用のことです。

胎児毒性

薬が赤ちゃんの発達や機能に影響を与えること。妊娠中期以降におこります。

妊娠禁忌の薬は妊娠の全期間を通して服用できませんが、そのほかの薬も、特に催奇形性が心配な妊娠4~10週ごろは服用に慎重になりたいもの。どうしても使いたい場合も自己判断での服用は避け、必ず医師や薬剤師に判断してもらってくださいね。

頭痛薬や便秘薬にも妊娠禁忌のものがある

頭痛薬や便秘薬といった身近な薬にも、妊娠に影響を及ぼすものがあります。

妊娠中期以降の頭痛・発熱にはロキソニンが使えない

頭痛や発熱には解熱鎮痛薬を用いるのが一般的ですが、妊娠中は解熱鎮痛薬の使用が制限されます。

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)に分類される「ロキソニン」「ボルタレン」などの解熱鎮痛薬。これらは妊活中の排卵期にも服用に注意と説明しましたが、妊娠中も中期以降の使用が禁忌とされています。これらは赤ちゃんの動脈管(お母さんから酸素をもらうために、胎児期だけにつくられる血管)を収縮させるおそれがあるためです。

妊娠中の頭痛や発熱によく用いられるのは「カロナール(アセトアミノフェン)」です。ただし、効果が穏やかなため、症状があまり改善されないと感じることも。使える薬はほかにもあるので、「カロナール」が効かないときは遠慮せず医師に相談してみましょう。

便秘薬の一部は子宮を収縮させるため妊娠禁忌

便秘は妊婦さんの多くが悩まされる症状の1つですが、腸のぜん動運動を激しくする作用のある便秘薬は妊娠禁忌とされています。

これは、腸が収縮すると子宮も収縮しやすくなり、早産をおこすリスクが上がるため。また、妊娠後期の母子に影響が出る可能性も指摘されています。一般に市販されている便秘薬でもこのタイプに該当するものは多いので、自己判断での服用は禁物です。

妊娠中に便秘になったときは、産科医に相談しましょう。便を柔らかくして出しやすくする、効き目が穏やかな便秘薬を処方してもらえます。

漢方薬にも副作用がある

漢方薬に対して「安心して飲める」というイメージを持っている人もいるかもしれませんが、実際には漢方薬にも副作用があり、種類によっては妊娠禁忌のものやできれば服用を避けたほうがいいものもあります。

妊娠前から継続して漢方薬を飲んでいる人は、妊娠がわかったら処方された医療機関に相談してください。市販の漢方薬を自己判断で使っている場合は、検査薬で陽性が出た時点で飲むのをストップしましょう。産院にかかり始めたら、服用を再開しても問題ないかを産科医に相談してみてくださいね。

産院初診で「今使っている薬」をすべて伝えよう

妊娠して初めて産院を受診するときは、処方された薬、市販薬、漢方薬、サプリメントなど、普段使っている薬をすべて問診票に記載してください。うっかり見落としがちですが、飲み薬だけでなく、塗り薬や貼り薬なども書いてくださいね。薬品名や「何の薬か」を正しく記載できるよう、受診前にあらかじめ整理しておけるとベストです。

うがい薬や塗り薬にも注意!

妊娠中はうがい薬や湿布薬のような、思いもよらない薬からも影響を受けることがあります。母体や赤ちゃんに影響する薬を、自分ですべて把握するのは難しいもの。妊娠したらどんな薬も自己判断での服用を避け、必ず産科医や薬剤師に確認を取りましょう。

うがい薬は必要以上の使用を控えて

うがい薬に含まれるヨードは、赤ちゃんの甲状腺機能に影響を与えるおそれがあると言われています。用法・用量を守れば妊娠禁忌ではありませんが、必要以上の使用は控えましょう。

湿布薬の一部は妊娠中期以降使用できない

妊娠中は、ホルモンの影響や体型の変化で腰痛がおこりがち。そんなときに使いたくなる、湿布薬にも注意が必要です。湿布薬の一部は、ロキソニンやボルタレンと同じく赤ちゃんの動脈管を収縮させるおそれがあるため、妊娠中期以降は使えません。

産科医や助産師に相談し、骨盤ベルトを使ったり、妊娠中もできるストレッチをしたりして対処しましょう。

妊娠中、体調不良で薬を飲みたくなったらどうすべき? 困ったときの相談先を知っておこう

妊娠中に体調を崩し薬が欲しいときは、まずかかりつけの産院へ相談してください。

妊娠中も使える薬を産院で処方してもらうのが基本

今ある症状がどんなもので、どんな薬がいいのか、産科医が総合的に判断し処方するのが最適です。産院で対応できない症状の場合は、ほかの科を紹介してもらえます。

どうしても産院に行けないときは、薬局の薬剤師に相談してみよう

妊娠中は医師に判断してもらい、薬を処方してもらうのが基本。症状がいつもと違う、ガマンできないほどつらいといったときは、時間外であっても産院に連絡してください。

産院で診てもらいたくても、すぐには受診できないこともあるかもしれません。そんなときは、薬局の薬剤師に症状の内容と妊娠中であることを伝え、妊娠中に飲める市販薬を教えてもらうのも1つの対処法です。

「妊娠中はすべての薬をガマンしなければ」と思う必要はない

医師に薬を飲んでもいいと言われても「赤ちゃんのために薬は避けるべき」と考え、体調不良を限界までガマンしてしまうお母さんがいます。赤ちゃんを大切に思う気持ちはもっともですが、無理はしないでくださいね。

妊娠期間をより健やかに過ごすことは、お母さんだけでなく赤ちゃんにとっても大切です。体調が悪いときは気軽に医師に相談し、処方された薬は指示どおり飲むようにしましょう。

薬を正しく活用して、健やかな妊活・妊娠生活を送ろう

「服用した薬が、赤ちゃんに影響を及ぼす」と聞くと、不安な気持ちになる方もいるかもしれません。本来薬は症状を緩和してカラダを楽にするためのもの。医師や薬剤師に相談して正しく服用することで、お母さんも赤ちゃんも健やかな妊娠生活を送りましょう。

男性も、体調の悪いパートナーのために薬局に行くことがあるかもしれません。「妊娠禁忌」の知識を身につけ、理解を深めておけるといいですね。

【記事監修】

株式会社ファミワン

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